Hondaは2026年11月3日、フルモデルチェンジした2027年モデルの「CBR1000RR-R FIREBLADE」シリーズを発表しました。イタリア・ミラノのEICMA 2026で世界初公開された新型は、従来からの標準モデルとSPに、WSBKのホモロゲーションモデルとして開発された「HRC WORKS EDITION」を加えた3タイプ構成です。
今回の中心は、外装や装備の小変更ではありません。Hondaによると車両全体の約75%の部品を新設計。フレーム、スイングアーム、吸気機構、素材の使い方まで見直し、サーキットでの競争力と操る楽しさを追求しています。量産二輪車としてHonda初の2段可変エアファンネルや、電子制御式とは異なる機械式サスペンションを選んだHRC WORKS EDITIONなど、タイプを選ぶ際に確認したい違いを整理します。

標準、SP、HRC WORKS EDITIONの3タイプへ
開発の軸は、従来から掲げるサーキットで本領を発揮するマシンという考え方です。2027年モデルではレースでの勝利と操る喜びをさらに追求し、車体とパワーユニットの両面を更新しました。そのうえで、3タイプに異なる装備を与えています。
| タイプ | 発表で確認できる主な装備・位置付け |
|---|---|
| CBR1000RR-R FIREBLADE | フロントにSHOWA製BPF、リアにSHOWA製BFRC-liteを継続採用。新型車体に合わせて減衰力設定を最適化。 |
| CBR1000RR-R FIREBLADE SP | ÖHLINS製電子制御サスペンションを採用。フロントは発表本文表記でNXP Smart-EC3.0、リアはTTX36 Smart-EC3.0。チタンタンクには手仕上げのヘアライン加工を施す。 |
| CBR1000RR-R FIREBLADE HRC WORKS EDITION | WSBKのホモロゲーションモデルとして新設定。一人乗り専用。専用CFRP製部品、ÖHLINS製機械式NPXフロントフォークとTTX36リアサスペンション、BREMBO製Hypure Sportsを採用。 |
SPとHRC WORKS EDITIONの違いは、装備の名称だけでなくサスペンションの方式にもあります。SPが電子制御式であるのに対し、HRC WORKS EDITIONは機械式です。「HRC WORKS EDITIONならSPの装備をすべて引き継ぐ」と考えず、それぞれの用途と仕様を確認する必要があります。
なお、Hondaの発表本文ではSPのフロントを「NXP Smart-EC3.0」、HRC WORKS EDITIONのフロントを「NPX」と表記しています。本記事はその発表表記に沿っており、名称を独自判断で統一していません。
フレームはねじり剛性を維持し、横剛性を20%低減
新設計のアルミツインチューブフレームでは、ねじり剛性を保ちながら横剛性を従来モデル比で20%低減しました。Hondaは、この変更によって旋回性能やタイヤの接地感、加速時の安定感を高め、サーキットと公道の双方でハンドリング性能のバランスを取ったと説明しています。
変更は部材の厚さだけではありません。エアクリーナーへ新鮮な空気を導くヘッドパイプの開口部を拡大したほか、エンジンシリンダーを吊るハンガーを変更。従来のスティフナー付き鋳造一体構造から、別体ステーをボルトで取り付ける構成にすることで、フレーム形状の自由度を高めています。
製法には薄肉GDC、すなわち重力金型鋳造を採用。最も薄い部分を2mmとするなど、場所ごとに肉厚を調整し、剛性の調整と軽量化を両立しました。発表されたフレームの軽量化量は従来モデル比440gですが、この数値の対象はFIREBLADEとFIREBLADE SPです。HRC WORKS EDITIONや車両全体の重量差として読み替えることはできません。
ここで重要なのは、「新型はあらゆる方向に硬くした」という変更ではないことです。ねじり方向の剛性を維持しつつ、横方向の値は下げるという設計です。Hondaが目指す接地感やハンドリングの改善については発表内容として紹介しており、本記事で実車試乗やラップタイムによる検証を行ったものではありません。
スイングアームも新設計。ピボット径は20mmから17mmへ
アルミプレス構造のスイングアームも全面的に見直されました。ピボットシャフト径は従来の20mmから17mmに変更し、部材の厚さとピボット幅も調整しています。こちらもねじり剛性を維持したまま、横剛性を12%低減する設計です。
狙いはコーナリング時のリアタイヤの接地感を高めること。フレームの横剛性20%低減とは対象部品が異なるため、2つの数値を加算して「車体剛性が32%低下した」と解釈することはできません。フレームとスイングアームをそれぞれ見直したうえで、車体全体のバランスを整えています。
サスペンションはタイプごとに減衰力の設定を最適化し、サーキットでの速さに加えて、公道での路面追従性向上も追求しています。標準モデルとSPは従来からの基本的なサスペンション構成を継続しつつ、新しい車体に合わせて調整された点がポイントです。
999cm³直列4気筒にHonda量産二輪初の2段可変エアファンネル
エンジンは、水冷4ストロークDOHC・4バルブの999cm³直列4気筒です。新たに採用された2段可変エアファンネルは、エンジン回転数に応じて吸気ポートの長さと太さを変化させる機構。Hondaの量産二輪車では初採用とされています。
2段構造のエアファンネルは上下に分かれる構成で、11,750rpm以上になると上方向へスライドして分割されます。Hondaは、高回転域の出力を維持しながら低中回転域の出力を向上させ、幅広い回転域で扱いやすくする狙いを説明しています。
この発表の数値は機構が切り替わる回転数であって、最高出力発生回転数やレブリミットを示したものではありません。また、本発表本文には最高出力と最大トルクの具体値が掲載されていないため、旧型の数値をそのまま2027年モデルの仕様として転記することは避ける必要があります。
2モータースロットルバイワイヤの制御も精密化
従来から採用する2モータースロットルバイワイヤでは、スロットルバルブの分配制御をさらに細かく行えるよう、電子制御の精度を高めています。Hondaが挙げる改善点は、加速時のコントロール性能、減速時のエンジンブレーキ性能、そして減速から加速へ移る際の滑らかさです。
可変エアファンネルが回転域に応じた吸気側の特性を担うのに対し、スロットル制御の見直しはライダーの操作に対する扱いやすさに関わる変更です。最高出力の数字だけで新旧を比べるのではなく、吸気機構と制御の両方に手が入ったモデルとして見ると、発表の意図を捉えやすくなります。
軽量化では、シリンダーヘッドカバーなどの部品を従来のアルミからマグネシウム材へ変更。FIREBLADE SPでは、これにより200g以上の軽量化を図ったとしています。この値も対象部品とタイプが限定された説明であり、装備重量全体を示すものではありません。

チタンタンクは外装カバーを省き、素材と機能を両立
燃料タンクにはチタンを採用しました。Hondaは過去にも2017年モデルのCBR1000RR SPおよびSP2でチタンタンクを採用していましたが、当時はプラスチック製のアウターシェルターが必要でした。今回はチタンのプレス技術と塗装技術の向上によって、そのシェルターを廃止しています。
素材を軽量なものへ置き換えるだけでなく、外側の部品を不要にしたことも軽量化につながっています。SPには専用仕上げとして手作業のヘアライン加工を施し、チタンの一部を見せるデザインを採用。機能面の変更を外観でも感じられる仕様です。
タンク両側面には、新たな「Honda Flagship WING」エンブレムを採用しています。シルバーと黒のモノトーンによるプロダクトエンブレムで、Hondaのスーパースポーツにおけるフラッグシップとしての位置付けを示します。
HRC WORKS EDITIONは専用空力部品と機械式足回りを採用
追加されたHRC WORKS EDITIONは、WSBKでの戦闘力向上を目的とした一人乗り専用モデルです。専用のフロントウイングレットに加え、フロントフェンダー、リアダクトカウルにはCFRP、すなわち炭素繊維強化プラスチックを使用しています。Hondaは軽量化と空力特性の改善によって、加速性能や旋回性の向上につなげたと説明しています。
足回りにはÖHLINSの機械式NPXフロントフォークとTTX36リアサスペンションを組み合わせ、サーキットで安定した減衰力と路面追従性を追求。ブレーキにはBREMBOのHypure Sportsを採用しました。SPの電子制御式サスペンションとは異なる選択である点は、仕様比較の際に見落とせません。
Hondaは各国の法規に適合させることで公道走行も可能としています。ただし、これは日本国内での販売時期、国内仕様の認可、あるいはどの状態でも公道を走れることを一括して保証する記述ではありません。国内での購入を検討する場合は、国内向けの正式発表と実際の車両仕様を別途確認する必要があります。

HRC Racing Kit装着時はメーカー保証の対象外
HRC WORKS EDITIONには、レースレギュレーションに対応するHRC Racing Kitも設定されます。発表で挙げられている部品は、PGM-FI・イグニッションユニット、ボトムニュートラルシフトシステム、ヘッドパイプカラー、スイングアームピボットカラーなどです。
Hondaは、HRC Racing Kitを装着するとメーカー保証の適用外になると明記しています。完成車としての公道走行に関する説明と、レース用キットを装着した状態の扱いは分けて考える必要があります。購入時には、キットの装着有無、走行する場所、参加する競技の規則、保証条件を確認することが重要です。
本発表ではキットの価格、個々の部品の販売形態、国内での供給時期までは示されていません。列挙された部品が車両価格に含まれる、またはすべて標準装備されると受け取らないよう注意してください。
4種類のサステナブルマテリアルを各タイプに採用
2027年モデルには、性能や軽量化の更新に加えて、4種類のサステナブルマテリアルを各タイプに採用しています。用途と材料の由来は次のように整理できます。
- ウインドスクリーン:植物由来のエンジニアリングプラスチック「DURABIO™」。成形性、耐候性、傷の付きにくさといった特性を利用しています。
- 前後シート底板:製造・成形工程で生じた端材由来のプレコンシューマーリサイクル材。
- エアクリーナーケースやサイドカバーなど:家庭や商業施設で使用済みになったプラスチック製品由来のポストコンシューマーリサイクル材。
- Honda Flagship WINGエンブレム:廃車などの使用済みアクリル樹脂を原料レベルまで戻して再生したケミカルリサイクルアクリル材。
製造段階の端材を利用する材料と、製品として使われた後の廃材を利用する材料は由来が異なります。Hondaは使用箇所に応じてこれらを使い分けています。「DURABIO™」は三菱ケミカル株式会社の登録商標です。なお、Hondaが掲げる2050年のサステナブルマテリアル率100%という目標は、新型車が現時点ですでに100%を達成したという意味ではありません。
国内導入や価格は続報を確認。今回分かったこと・未公表のこと
今回の発表で確認できるのは、2027年モデルの3タイプ構成、主要な設計変更、HRC WORKS EDITIONの専用装備などです。一方、参照した発表本文には日本での発売日、国内価格、最高出力・最大トルクの具体値、車両全体の重量や燃料タンク容量などをまとめた国内向け諸元表は掲載されていません。
したがって、これらの項目に旧型の数値を当てはめたり、海外での世界初公開を国内発売開始と同じ意味で扱ったりすることはできません。買い替えやサーキット用車両の導入を検討している人は、標準モデル、SP、HRC WORKS EDITIONの装備差を押さえたうえで、国内向け発表や販売店の正式な案内を待つのが確実です。
Hondaの発表が示す新型の特徴は、部品の約75%を改めた車体設計、回転域に応じて働く可変吸気機構、タイプごとに異なる足回り、そしてレースを強く意識した新バリエーションにあります。単なる装備追加ではなく、どのタイプをどの用途で使うかを改めて考える必要があるフルモデルチェンジといえるでしょう。
出典・確認情報
メーカー:本田技研工業株式会社(Honda)。参照・確認日:2026年11月3日。この記事はHondaの2026年11月3日付公式発表を基に、Bikeman ニュース 編集部が独自に要約・再構成したものです。性能向上の説明はメーカー発表によるもので、編集部による実車試験の結果ではありません。
Honda公式発表:大型スーパースポーツモデル「CBR1000RR-R FIREBLADE」をフルモデルチェンジし世界初公開











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