同じコースで、同じ銘柄のタイヤを使っていても、選ぶコンパウンドは一つに決まらない。10月24~25日に福島県のチーズナッツパークで開催された全日本エンデューロ選手権最終戦では、メッツラー「MCE 6 Days Extreme」を使う選手たちのリアタイヤ選択が分かれた。
METZELER FAN SITEが10月26日に公開した選手取材には、岩への対応を重視してソフトを試した選手と、掘り返された土でのトラクションを求めてミディアムを選んだ選手の声が収められている。本記事では大会結果の再掲ではなく、5選手の使用仕様と選択理由に焦点を当てる。以下の走行評価は各選手の体感であり、同条件の比較試験による性能判定ではない。

岩のあるテストと粘土質のルートをどう両立するか
今回の会場は10kmのループの序盤にテストを設けた構成。岩や倒木のある沢筋の下り、露出した岩盤があり、その一方で粘土質の路面も多かった。石でのはじかれを抑えたい場面と、走行を重ねて練られた土で駆動力を得たい場面が、同じ大会に存在していた。
そのため、単に「岩があるからソフト」と割り切るのではなく、どの区間を重視するか、雨や走行によって路面がどう変わるかが選択の背景になっている。特に興味深いのは、馬場亮太と藤岡丈瑠が2日目にリアの仕様を変更し、その方向が正反対だったことだ。
5選手の使用タイヤを整理
下表はいずれもMCE 6 Days Extreme。フロントの「スタンダード」「ミディアム」は出典の表記をそのまま区別しており、両者を同一仕様とは扱っていない。
| 選手・車両 | フロント | リア | ムース等の記載 |
|---|---|---|---|
| 馬場亮太/YZ250FX | ミディアム、2日間同じもの | DAY1ミディアム→DAY2ソフト | メッツラー新品 |
| 田中教世/CRF250RX | スタンダード | ミディアム | ムースは毎回新品。DAY2に前後タイヤを新品へ交換 |
| 堀越秀鷹/YZ125 | ミディアム | ソフト | メッツラー・ミディアム |
| 太田幸仁/350EXC-F | スタンダード | ミディアム | メッツラー新品 |
| 藤岡丈瑠/YZ250X | スタンダード | DAY1ソフト→DAY2ミディアム | ムース仕様の記載なし |
馬場はソフトを試し、藤岡はミディアムへ戻した
馬場は初日に前後ミディアムを使い、2日目はフロントを継続使用したままリアをソフトへ変更した。ソフトでレースを走るのは初めてで、石やギャップへの対応を試す狙いがあったという。テストでは石に当たったときのはじかれ感が少なくなったと評価する一方、ルートが次第に粘土状に練られていくと、ソフトでは物足りなさも感じたと説明している。
本人も路面条件が大きく変わっており、同条件で比較できたわけではないと留保している。ソフトの効果を感じた区間があっても、それをコース全体での優位性や、別会場での性能差へ広げることはできない。ミディアムでは自分の体の動きでトラクションを引き出す感覚が必要だという説明も、馬場自身の乗り方を含む評価として読むべきだろう。

藤岡は逆に、初日のリアにソフトを選び、2日目をミディアムで走った。初日の序盤には好感触だったものの、掘り返された後半の路面で滑り始めたことを理由に挙げている。本人の評価では、泥の多い路面ではミディアムのほうが食い込む感触がよかったという。
馬場と藤岡の判断が逆だったことは、どちらかの選択が誤りだったことを意味しない。車両も走るクラスも異なるうえ、優先したい区間や本人の感触にも違いがある。同じ大会名だけでは、個々のタイヤ選択を一律に説明できないことが読み取れる。
ミディアム継続でも、交換計画と狙いは異なる

田中教世は普段から使うリアのミディアムを継続した。土の路面で攻められる状態を重視し、ムースも毎回新品を用いる方針だという。前後タイヤは2日目に新品へ交換。本人は2日目に感じるケースのヨレを気にしており、交換は事前に決めていたと説明している。これは田中のレース運用であって、全ユーザーに同じ交換周期を求める情報ではない。
太田幸仁もリアはミディアム。石への対応よりも、土の部分でしっかりトラクションを得たいという狙いを語っている。タイヤに不満はなかったとする一方、雨による濡れ方やラインの荒れ方が変化する中で、試した走り方が結果につながらない場面もあったという。タイヤの選択だけでなく、路面変化に対する走行ラインの判断も含めて振り返っている。
125ccでソフトを選んだ堀越の受け止め方
YZ125の堀越秀鷹は、石の多さと一度試したいという意図からリアにソフトを選択した。125ccで駆動力を引き出す際にはタイヤに助けられる感触があった一方、石ではなおはじかれもあり、そこまで柔らかい仕様を選ぶ必要があったのかという迷いも残ったという。
肯定的な感触だけでなく、選択への留保も含めて読むことで、選手取材の意味が明確になる。「ソフトなら必ずはじかれなくなる」「ミディアムなら必ず泥に強い」といった単純な結論を導く記事ではない。
結果とタイヤ評価は切り分けたい
大会では馬場がIAクラスの5年連続タイトル、藤岡がNAクラスのタイトルを獲得した。ただし順位にはライダーの技量、車両、路面変化、転倒やトラブルなど複数の要素が関わる。好成績をそのまま特定コンパウンドの性能証明と読み替えることはできない。
今回の取材で確認できるのは、選手が何を重視して仕様を決め、走った後にどう受け止めたかだ。メーカーの新製品発表や、一般利用に向けた一律の推奨条件が示されたものではない。大会の順位と展開はJEC最終戦DAY2の既報を参照してほしい。
メーカー:METZELER(メッツラー)。出典・写真:METZELER FAN SITE「JEC最終戦 チーズナッツ2デイズエンデューロ」選手取材(公開:2026年10月26日/確認:2026年10月29日)。本記事はメーカー掲載取材を基に、タイヤの使用仕様と選択理由に焦点を絞って独自に要約・再構成した。











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