国土交通省は2026年10月28日、「自動二輪車駐車場の確保に関する事例集(附置義務等による駐車場確保編)」を公表しました。建築物の整備などに合わせてバイクの駐車スペースを確保する取組を、14自治体の事例から紹介した資料です。
今回の発表は、各地ですでに運用されている制度や工夫を自治体が参照できるようにまとめたものです。全国で一斉に新しい駐車場設置義務が始まるという発表ではなく、公表当日から利用できる駐車枠が増えたことを知らせるものでもありません。街なかのバイク駐車環境を、建物の新築や開発と結び付けて整える考え方を知る資料として読むことができます。
建物の整備に合わせて駐車スペースを確保する「附置義務」
事例集が取り上げる「附置義務」は、一定の条件に当てはまる建築物の新築などに際し、駐車施設を設ける仕組みです。国土交通省は、市街地の自動二輪車や原動機付自転車の駐車スペース確保に関する関係省庁連絡会議を設置しており、今回の資料はその議論を踏まえて作成されました。
資料では、駐車場法に基づく条例による取組と、同法に基づかない条例による取組を分けて整理しています。後者には、自転車に関する条例と関連付けたものや、開発協議に関わる条例の中に設置基準を設けたものがあります。同じ「バイクの駐車場確保」でも、制度の組み立て方は一つではありません。
また、対象となる地域、建物の用途、面積の条件、必要台数の考え方は自治体ごとに異なります。資料に掲載された一つの数値を、別の地域や建物にもそのまま当てはめることはできません。本記事は公表資料の内容を紹介するもので、個別の建築計画に対する義務の有無や必要台数を判断するものではありません。
14自治体を三つの区分で紹介
事例集の構成は、次の通りです。各事例には導入背景、制度の内容、導入後の効果、自治体の条例や案内へのリンクが掲載されています。
- 駐車場法に基づく条例の事例:10都市。さいたま市、川越市、千葉市、横浜市、川崎市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市、那覇市。
- 自転車条例に関連した事例:2都市。仙台市、広島市。
- 開発に関する条例の事例:2自治体。江戸川区、藤沢市。
たとえば、さいたま市の事例は駅周辺の集客施設の整備に伴う駐車需要への対応を紹介しています。千葉市では四輪車用に比べて二輪車用の駐車場が少ないことや、長年にわたる設置要望が導入背景として挙げられています。那覇市では施設の用途・地域別に駐車施設や利用実態を調査し、駐車スペースの不足を確認したことが導入につながったと説明されています。
こうした記述からは、単に駐車枠の数を定めるだけでなく、どこに、どのような需要があるのかを把握することも、制度づくりの背景になっていると読み取れます。
京都・神戸・福岡などでは整備実績も掲載


事例集には、制度導入後の実績が示されている自治体もあります。千葉市の事例では、2023年4月の導入から3年間で15台分の附置義務駐車施設が整備されたとしています。
京都市については、2014年の改正以来、2025年度末時点で約260か所、約510台分の自動二輪車駐車場を設置したと記載されています。具体例として挙げられた京都市役所分庁舎は16台分で、そのうち附置義務による台数は3台です。この例では、施設全体の設置台数と制度上必要な台数を区別して示しています。
神戸市は2015年の改正以来、2025年度末時点で約79か所、約296台分を設置したと紹介されています。福岡市は、2017年4月1日の改正条例施行から2026年3月31日までに、商業地域と近隣商業地域の対象建築物で約1,600台分を整備したとしています。
これらは資料に掲載された、それぞれの期間・対象における実績です。集計期間も制度の対象もそろっていないため、単純に合計して全国の増加台数としたり、数の大小だけで自治体の取組を順位付けしたりすることは適切ではありません。また、掲載台数がそのまま現在の一時利用可能台数や空き台数を表すわけではありません。
大阪市の「約7,700台」は設置協議の台数


数値を読む際に特に注意したいのが、大阪市の事例です。資料では、2008年の条例改正以来、2025年度末時点で、附置義務で設置が必要となる約3,000台を含め、約7,700台分の自動二輪車駐車施設の設置について「協議を実施」したとしています。
ここで示されているのは協議に関する実績です。「約7,700台分がすべて完成して一般向けに営業している」「今回新たに約7,700台分が増設された」と読み替えることはできません。駐車環境の整備を扱うニュースでは、計画、協議、設置、利用開始という段階を分けて受け止める必要があります。
自転車・原付との合算や、開発に合わせた確保も
駐車場法に基づく条例以外の事例にも、地域ごとの考え方が表れています。仙台市は自転車の附置義務条例を制定した際、バイクの放置が社会問題となっていたことを背景に、自動二輪車も対象にした事例です。広島市の事例では、自転車、原動機付自転車、自動二輪車を合わせて必要台数を算出する基準が紹介されています。
藤沢市も、自転車・原動機付自転車・自動二輪車を合算して台数を算出する仕組みです。資料ではそれぞれの設置割合は任意とされる一方、地形などの立地特性から自転車より原付や自動二輪車の利用が多く見込まれる場合には、それらの設置にできる限り配慮を求めると説明されています。合算された台数のすべてが、バイク専用の駐車枠になるわけではない点が重要です。
江戸川区は、開発に関する条例を通じた確保を紹介しています。導入以来、住宅以外の建築物に約1,500台分の自動二輪車駐車施設が設置されたとする一方、その台数には除却による減少を織り込んでいないとの注記があります。この数値についても、現在残っている施設の総台数として扱わないよう注意が必要です。
ライダーが実際に利用するときは、施設ごとの案内を確認
今回の事例集は自治体の施策を紹介する資料であり、利用できる駐車場を網羅した検索サービスではありません。掲載された設置事例や台数だけでは、目的地で自分のバイクを停められるかどうかまでは判断できません。
日常の移動やツーリングで駐車場を探す場合は、施設や運営者の最新案内で、二輪車を受け入れているか、排気量や車体寸法の制限があるか、一時利用ができるか、営業時間や料金はどうなっているかを確認してください。これは利用前の確認事項であり、今回の資料が全国共通の利用条件を定めたという意味ではありません。
街なかの駐車環境を改善する取組を知りたい場合には、導入背景や実績に加え、事例集の各自治体紹介ページに掲載された条例・案内へのリンクをたどると、制度の対象を確かめやすくなります。制度の具体的な適用については、当該自治体の最新資料や担当窓口での確認が必要です。
国土交通省が今回共有したのは、バイクの駐車場所を確保するために各自治体が積み重ねてきた取組です。公表時点の空き状況と制度の整備実績を混同せずに読むことで、自動二輪車の利用環境を支える仕組みへの理解につながります。
出典・確認情報
発表元:国土交通省 都市局 街路交通施設課(本記事はメーカー発表ではなく行政の公表資料を紹介しています)。発表日:2026年10月28日。確認日:2026年10月28日。本文は以下の一次資料をもとに、Bikeman ニュース 編集部が要約・再構成しています。
- 国土交通省「市街地の自動二輪車等の駐車スペース確保を推進!」
- 自動二輪車駐車場の確保に関する事例集(附置義務等による駐車場確保編)PDF
- 市街地における自動二輪車等の駐車スペース確保に係る関係省庁連絡会議
本文写真・アイキャッチの写真出典:国土交通省「自動二輪車駐車場の確保に関する事例集」。本文写真はPDFから切り出し、アイキャッチは京都市の掲載写真に見出し等を配置して編集部が加工しています。国土交通省が作成したアイキャッチではありません。本文の要約・再構成および画像の利用は、国土交通省の利用規約(公共データ利用規約・PDL1.0)に基づきます。











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