2027年型Honda CRF450Rの変化は、最高出力の数字だけでは捉えきれない。Off1.jpが2026年10月17日に公開した開発者取材では、低中回転域の扱いやすさを保ちながら出力を伸ばし、それを受け止める車体も合わせて進化させるという考え方が紹介されている。
そこで今回は、Off1.jpの開発者インタビューを入口に、Hondaの国内公式資料から「10.3%向上」の比較条件、エンジンと車体の変更点、CRF450RXとの違いを整理する。開発者の詳しい言葉や取材の経緯は原記事を参照してほしい。

「最高出力10.3%向上」は2026年モデルとの比較
HondaのCRF450R/RX公式解説では、新設計エンジンの最高出力が2026年モデル比で10.3%、最大トルクが3.7%向上したとされる。比較相手は他社車でも、10年前のモデルでもなく、直前の2026年モデルだ。
最高出力と最大トルクは、それぞれのピーク値の比較である。全回転域で一律に10.3%強くなるという意味ではなく、加速やラップタイムが同じ割合で改善すると示した数値でもない。実走では路面、タイヤ、ギヤの選択、ライダーの操作が加わるため、出力の増加率をそのまま速さの増加率へ置き換えることはできない。
同じ公式解説が示すのは、エンジン単体で2.7kgの軽量化と、幅17mmの縮小。動力性能とパッケージの両方を改めたモデルチェンジと読める。なお、エンジンの軽量化量は完成車の重量変化に含まれる要素であり、両者を足して「さらに軽くなった」と数えるものではない。出典:Honda「主な特徴」
449.5ccの新エンジン。注目したいのは組合せ
国内諸元上のエンジンは、水冷4ストロークOHC・ユニカム4バルブ単気筒。排気量449.5cc、内径×行程97.0×60.83mm、圧縮比13.75という構成で、5速トランスミッションを組み合わせる。CRF250RのDOHCエンジンとは区別しておきたい。出典:国内主要諸元PDF
Hondaの発表によれば、吸排気バルブ、カム、燃焼室、ピストン、クランクシャフトなどを見直し、変速比も新しい出力特性に合わせて変更した。ひとつの部品だけで性能を引き上げたという説明ではない。購入を検討する側も、圧縮比やボア径だけを見て乗り味を決めつけず、完成車としての違いを確かめる必要がある。
クラッチには、バックトルクを緩和するスリッパー機構を採用する。ラバーダンパーのみでこの機能を成立させた点について、Hondaは同社調べで世界初と説明している。減速時のエンジンブレーキに伴う挙動へ対処する機構だが、これを自動変速や、クラッチ操作を不要にする機能と解釈しないことも大切だ。出典:Honda国内発表
軽さと、動きを予測しやすい車体を両立させる

Hondaはメインフレーム構成部品の約70%を新設計し、フレーム重量を2026年モデルと同等に保ちながら、ヘッドパイプ周辺の縦・ねじり剛性を10%高めたと説明する。ステップ位置も後方へ移し、リヤ側へ荷重をかけやすいライディングポジションを狙っている。
ここでの10%はエンジンの出力増加率とは別の数値であり、車体全体が一様に10%硬くなったという意味でもない。どの部分の剛性を変え、どう荷重を伝えるかが設計上の焦点だ。軽量化と安定性を別々の評価軸として見ると、変更の意図を理解しやすい。
フロントフォークにはDBS(ダイナミック・ブロー・システム)構造を採用し、極低速から低速域の圧側減衰特性を重視する。この「低速域」はサスペンションの作動に関する説明で、単に車速が低い場面だけを指すものではない。試乗の機会があれば、直線での加速だけでなく、ブレーキングから進入、荒れた路面での姿勢変化まで確認したい。出典:Hondaの車体・サスペンション解説
CRF450RとRX、国内仕様を並べると何が違う?
CRF450Rはモトクロス競技向け、CRF450RXはエンデューロ競技向け。共通のエンジンを基礎にしているが、用途に合わせた装備と設定は異なる。主な国内諸元を比較すると次のようになる。
| 項目 | CRF450R | CRF450RX |
|---|---|---|
| メーカー希望小売価格(税込) | 1,182,500円 | 1,226,500円 |
| 車両重量 | 108.0kg | 108.8kg |
| シート高 | 953mm | 951mm |
| 最低地上高 | 333mm | 326mm |
| リヤタイヤ | 120/90-19 66M | 120/90-18 65M |
| 燃料タンク容量 | 7.1L | 7.1L |
諸元はHonda国内主要諸元、価格は国内製品ページに基づく。価格には消費税10%とリサイクル費用を含み、販売店の実売価格や購入時の総支払額を示すものではない。
RXはナックルガード、サイドスタンド、専用の大型スキッドプレートを標準装備し、前後サスペンションとECUにも専用設定を施す。両車の希望小売価格差は44,000円だが、装備品の足し算だけで選ぶより、普段走るコースや参加する競技を先に決めたほうが比較しやすい。出典:RXの専用装備・設定
また、2027年型では両車が7.1Lのチタン製タンクを共有する。「RXなら必ず大容量タンク」という従来のイメージだけで選ばず、必要な航続時間と給油の運用を確認したい。シート高の差も2mmにとどまり、数値だけで足つきが大きく変わると期待するのは早計だ。サスペンションの沈み込みやシート形状、装備を着けた状態も合わせて見る必要がある。
電子制御も搭載。エンジン特性は3モードから選択
新型にはスタンダード、スムーズ、アグレッシブのエンジンモードに加え、HSTC(Honda セレクタブル トルク コントロール)とローンチコントロールを搭載し、新エンジンに合わせて設定を見直している。機械部分を重視した競技車という印象から、電子制御がないモデルと捉えるのは正確ではない。出典:Honda電子制御システム解説
モード名は選択の手掛かりになるが、どの路面でも同じ設定が最適とは限らない。車両の取扱説明書に沿って機能を理解し、タイヤやサスペンションの状態も含めて合わせていくことが前提となる。本記事では試乗を行っておらず、乗り味の評価はメーカーが示す開発意図と区別している。
2027年型はすでに2026年9月発売。受注期間は10月31日までの案内
日本での発売日は、R・RXとも2026年9月4日。「2027年型」はモデルイヤーを示し、発売が翌年という意味ではない。今回の10月17日のOff1記事公開日とも異なる。出典:Honda発売発表
10月19日に確認した国内製品ページでは、受注期間は2026年6月19日から10月31日まで。ただし、生産可能台数を上回る注文などにより、期間終了前に受注を終える場合がある。購入を検討している場合は、受付の可否、納車予定、販売店の見積もりを別々に確認したい。公式ページに期間が載っていることは、今日の注文受付や即納在庫を保証するものではない。
R・RXとも競技専用車であり、ナンバープレートを取得して公道を走ることはできない。Hondaは一般交通に使われる場所での走行も認めていないため、RXの「エンデューロ向け」を林道ツーリング用の登録可能車と読み替えないようにしたい。走行場所の利用条件と、参加予定の競技の車両規定を購入前に確認する必要がある。出典:受注・使用条件を含むHonda国内製品情報
新型を検討する際の順番は、まず用途と走行場所、次にR/RXの設定・装備差、そして出力特性や車体の変化だ。最高出力10.3%向上という数字は大きな見どころだが、自分の走り方に合うかを判断する材料は、それだけではない。
取材記事:Off1.jp「モトクロッサーはいつまで進化するか、MY27 CRF450R開発陣と話した」(2026年10月17日、稲垣正倫)。本記事は取材内容を一部紹介し、Hondaの国内公式情報を基に独自に構成した。情報確認日:2026年10月19日。











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