2026年のMoto3世界チャンピオンは、マキシモ・キレスに決まった。10月9日から11日にインドネシア・ロンボク島のプルタミナ・マンダリカ・インターナショナル・サーキットで行われた第17戦インドネシアGPで、キレスはシーズン10勝目を挙げた。10月11日の決勝終了時点で5戦を残しての戴冠となる。
同じ週末のMoto2ではイサン・グエバラが3連勝を達成。日本勢は佐々木歩夢が13位、古里太陽が14位、Moto3の山中琉聖が11位で、それぞれポイント獲得圏内に入った。ピレリがMoto2に持ち込んだ開発リアタイヤ「F0515」のレースデビューや、両クラスの決勝ラップレコード更新も見逃せない。10月14日に公開されたPIRELLI FAN SITEのレース報告と主催者の発表から、王座決定の経緯、日本人ライダーの結果、タイヤ選択を振り返る。

キレスが6番グリッドから逆転し、勝利でタイトルを決める
キレスにとって、マンダリカの週末は速さを見せながらも、すべてが順調に進んだわけではなかった。土曜日のフリープラクティス2では1分36秒690を記録し、Moto3のオールタイムラップレコードを更新。しかし予選Q2では転倒があり、決勝のスタート位置は6番手となった。ポールポジションを獲得したのはブライアン・ウリアルテだった。
決勝ではキレスがスタートから順位を上げ、1周目に2番手へ進出。2周目には先頭に立った。序盤のうちに集団から抜け出すと、速いラップを重ねて後続との差を拡大する。PIRELLI FAN SITEによれば、キレスは4周連続でファステストラップを刻み、5周目には2秒以上のリードを築いていた。
追うダビド・アルマンサは、スタートで先頭を奪った後、集団内の争いで一時8番手まで後退した。それでも5周目には2番手を取り戻し、キレスのミスによって差が縮まる場面もあった。キレスはそこから再びリードを保ち、終盤まで首位を譲らなかった。
20周のレースを制したキレスと、2位アルマンサの差は2.994秒。3位にはウリアルテが入り、スペイン勢が表彰台を占めた。主催者のMoto3決勝レポートでも、2周目に先頭へ出たキレスが優勝し、世界タイトルを確定させたことが報告されている。
17戦で10勝、15回の表彰台というシーズン
ピレリの10月11日発表では、インドネシアGP終了時点のキレスの成績は17戦で10勝、15回の表彰台。獲得ポイントは351点となり、同発表時点でランキング2位アルマンサとの差を132点まで広げた。この大会で王座を確定させたのは、単に勝利数が多かったからではなく、表彰台に乗り続けて得点を積み重ねていたためでもある。
キレスは2025年にMoto3へデビューし、同年のルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。今回は参戦2年目での世界タイトルとなる。また、ピレリがMoto3へのタイヤ供給を開始した2024年以降、同クラスでは3人目の世界チャンピオンとなった。ここで示した成績と残りレース数は、いずれもインドネシアGPの王座決定時点のものだ。
日本勢は3人がポイント獲得。山中11位、佐々木13位、古里14位
日本人ライダーの結果は次のとおり。佐々木と古里がMoto2、山中、三谷然、荻原羚大がMoto3に出走した。
| クラス | ライダー | 決勝スタート位置 | 決勝結果 |
|---|---|---|---|
| Moto2 | 佐々木歩夢 | 16番手 | 13位 |
| Moto2 | 古里太陽 | 15番手 | 14位 |
| Moto3 | 山中琉聖 | 11番手 | 11位 |
| Moto3 | 三谷然 | 24番手 | 16位 |
| Moto3 | 荻原羚大 | 16番手 | リタイア |
山中琉聖は4戦連続でポイント圏内へ
山中は金曜日のプラクティスでトップから0.616秒差の6番手となり、予選Q2への直接進出を決めた。土曜日は11番グリッドを確保。決勝では序盤から9番手を争う集団に加わり、最終的に11位でチェッカーを受けた。
前戦の日本GPでは今季最高の8位に入っていた山中。インドネシアでは連続トップ10こそ逃したものの、ポイント獲得は4戦連続となった。短い間隔で続いた日本、インドネシアの2大会を、ともに入賞で終えている。
主催者のMoto3決勝結果では、山中は11位で5ポイントを獲得している。
佐々木歩夢は赤旗再スタートのレースを13位で完走
佐々木は16番グリッドから決勝に臨んだ。Moto2は最初のスタート直後に複数台が絡む転倒が発生し、赤旗で中断。レースは14周に短縮して再開された。
佐々木は再スタート後のレースでスタート位置より順位を上げ、13位でフィニッシュ。前戦日本GPの14位に続き、2戦連続でポイントを獲得した。赤旗によって仕切り直しとなった一戦でも、最後まで走り切って得点につなげた。
古里太陽は好スタートの手応えを残す14位
Moto2ルーキーの古里は、予選Q1を3番手で通過してQ2へ進出した。Q2では16番手だったが、他選手のグリッド降格によって決勝は15番手からスタート。最初のスタートでは一時8番手まで上がり、上位を狙う走りを見せた。
しかしレースは赤旗中断となり、その順位のまま決着することはなかった。再開後は前を走るライダーについていったものの、6周目以降の集団内での攻防で外側へ押し出される場面があり、走行のリズムを崩したという。最終結果は14位となった。
ポイントを持ち帰った一方、最初のスタート直後に築いたポジションを生かせなかった悔しさも残る。PIRELLI FAN SITEの報告では、古里自身が赤旗中断前の8番手から、さらに上位を狙える可能性があったと振り返っている。今回は、最初のスタートでの順位上昇と、再開後の正式な決勝結果を分けて捉えたい。
三谷然はポイントまで0.139秒、荻原羚大は3周目に転倒
三谷は予選Q1で11番手となり、Q2進出を逃した。さらに予選中の低速走行に対する12グリッド降格のペナルティがあり、決勝は24番グリッドから出走。レースでは後方から順位を上げ、16位まで追い上げた。
主催者結果では15位ヘスス・リオスのトップとの差が26.067秒、三谷が26.206秒。両者の差はわずか0.139秒だった。三谷はスタートから8つ順位を上げたが、ポイント獲得圏内にはあと一歩届かなかった。
荻原は、負傷したコーマック・ブキャナンの代役として日本GPに続いて出場した。予選Q1は6番手、決勝は16番グリッドからのスタート。しかし3周目に転倒し、世界選手権での2度目の決勝はリタイアとなった。
Moto2はグエバラが3連勝。エスクリチのトラブルで終盤に首位交代
Moto2の予選で最も速かったのはグエバラだった。1分31秒963というオールタイムラップレコードを記録し、今季5回目のポールポジションを獲得。オーストリアGP、日本GPと続いた勝利の勢いを、インドネシアでも維持していた。
決勝の最初のスタートでは、1コーナーでダビド・アロンソ、ダニエル・オルガド、ジョー・ロバーツ、コリン・ベイヤーが絡む多重クラッシュが起こった。赤旗が提示され、レースは14周での再スタートとなる。
再開後に先頭へ出たのは、2番グリッドのアレックス・エスクリチ。3周目には1分32秒497という決勝ラップレコードを刻み、初優勝に向けてレースを引っ張った。グエバラはその後方から機会をうかがう展開となった。
決着を左右したのは終盤だった。残り2周の13周目、エスクリチにマシントラブルが発生し、リタイア。これでトップへ出たグエバラが、そのまま優勝をつかんだ。第15戦オーストリアGP、第16戦日本GPに続く3連勝で、シーズン通算では4勝目となる。
2位には、10番グリッドから追い上げたマヌエル・ゴンザレスが入った。3位はオルガド。最初のスタートで転倒に巻き込まれながら、再開後のレースを走り切って表彰台に戻った。
グエバラが25ポイント、ゴンザレスが20ポイントを得たことで、この大会ではグエバラが5ポイント差を詰めた。Moto3で年間王者が決まった一方、Moto2ではゴンザレスを追うグエバラの連勝がタイトル争いをさらに接近させた。決勝の経過はMotoGP公式レポートでも確認できる。
ピレリのF0515がMoto2で実戦デビュー。変わったのはコンパウンドではなく構造
今回のタイヤ面の話題は、Moto2に投入されたソフトリアの開発仕様F0515だった。ピレリによると、従来のソフトSC0と同じコンパウンドを使いながら、新しい構造を組み合わせたタイヤだ。開発の狙いは、安定性とレースを通じた性能の持続性を高めることにある。
ここで重要なのは、F0515を単純に「SC0より軟らかいタイヤ」と捉えないこと。同じコンパウンドを用い、構造の変更で特性を改善しようとする開発仕様である。予選の1周だけではなく、周回を重ねたときの挙動を比較することが今回の投入のポイントだった。
マンダリカは、表面の粗いアスファルトによって機械的なグリップを得やすい一方、高い路面温度によってグリップの状態が変化し、タイヤの熱負荷が大きくなるコースだ。ピレリは、60℃を超えることもあるこうした環境を、新仕様の評価に適した条件と説明していた。大会前の公式発表では比較を進めるため、各ライダーが使用できるリアタイヤの上限を通常の8本から9本に増やすことも案内している。
予選最速はSC0、決勝の優勝・2位はF0515
予選でグエバラがポールポジションを獲得したときに使っていたリアタイヤは、従来仕様のSC0だった。一方、予選2番手のエスクリチと3番手アロンソはF0515を装着していた。
決勝ではF0515を選ぶライダーが多数となり、優勝したグエバラ、2位のゴンザレス、そして決勝ラップレコードを出したエスクリチがこの開発仕様を使用した。フロントは全選手がソフトSC1を選択している。
従来のSC0で予選の最速記録が生まれ、F0515を使ったライダーが決勝で上位に入った。この2つの事実を合わせて見ると、今回の週末が新旧のソフトリアを実戦で比較する機会だったことが分かる。ただし、順位やタイムだけから、F0515があらゆる条件でSC0より優れると結論づけることはできない。結果にはライダー、マシン、走行条件なども関わる。
Moto3ではSC2が中心。表彰台3人もリアはミディアム
Moto3には、フロントとリアのそれぞれにソフトSC1とミディアムSC2が用意された。決勝で主流となったのはSC2で、ピレリの報告ではリアはほぼ全員がこのミディアム仕様を選んだという。
| Moto3決勝順位 | ライダー | フロント | リア |
|---|---|---|---|
| 1位 | マキシモ・キレス | SC2(ミディアム) | SC2(ミディアム) |
| 2位 | ダビド・アルマンサ | SC1(ソフト) | SC2(ミディアム) |
| 3位 | ブライアン・ウリアルテ | SC2(ミディアム) | SC2(ミディアム) |
キレスとウリアルテは前後ともSC2。アルマンサはフロントにSC1を使い、リアは2人と同じSC2だった。表彰台の3人でもフロントの選択は一様ではなく、前後をどう組み合わせるかという違いが見られる。
PIRELLI FAN SITEが紹介する事前分析では、リアのSC1とSC2は序盤から中盤に近い性能を示す一方、SC2には終盤の安定した性能が期待されていた。実際の採用状況とレース結果は、その予測を検討する材料となる。ただし、キレスの世界タイトルや独走を、タイヤの硬さだけで説明するものではない。
両クラスの決勝レコード更新。予選記録とは分けて確認
この週末には、Moto2、Moto3のいずれもオールタイムラップレコードと決勝ラップレコードが更新された。同じ「レコード」でも、決勝中に記録された最速周回なのか、別のセッションを含む記録なのかで意味が異なる。今回の主なタイムを整理すると、次のようになる。
| クラス | 記録の区分 | ライダー | タイム | 記録した場面 |
|---|---|---|---|---|
| Moto2 | オールタイムラップレコード | イサン・グエバラ | 1分31秒963 | 予選 |
| Moto2 | 決勝ラップレコード | アレックス・エスクリチ | 1分32秒497 | 決勝3周目 |
| Moto3 | オールタイムラップレコード | マキシモ・キレス | 1分36秒690 | フリープラクティス2 |
| Moto3 | 決勝ラップレコード | マッテオ・ベルテッレ | 1分37秒189 | 決勝18周目 |
Moto2のエスクリチは、2025年にオルガドが記録した1分33秒104を0.607秒短縮した。Moto3ではベルテッレが従来の決勝記録を0.066秒更新している。ベルテッレの記録が20周中の18周目に出た点も、レース経過を読むうえで注目したい。
また、ピレリは前年との比較で、レースの平均ペースがMoto2では1周あたり0.6秒以上、Moto3では約0.4秒向上したと発表した。同社は前年とは周回数が異なることにも触れており、レース総時間の単純比較ではない。タイム改善は確認できる一方、その改善分すべてをタイヤだけの効果とみなすことは避けたい。
新仕様の採用状況と記録の詳細は、ピレリの決勝後公式発表に掲載されている。
次はフィリップアイランド。王者決定後のMoto3と接戦のMoto2に注目
インドネシアGPでは、キレスの勝利と世界タイトル獲得、グエバラの3連勝、日本人3選手のポイント獲得、F0515の投入とラップレコード更新が重なった。Moto3は年間王者が決まっても各大会の勝利を巡る争いが続き、Moto2ではグエバラとゴンザレスの対決がシーズン終盤の大きな見どころになる。
オーストラリアGP主催者の公式案内によると、次戦の第18戦オーストラリアGPは10月23日から25日にフィリップアイランドで開催予定。日本勢では、山中の連続ポイント獲得、佐々木の直近2戦の入賞、古里が見せたスタート直後の前進が次につながるか。マンダリカの結果を足掛かりに、各選手の走りを追っていきたい。
本稿は2026年10月19日時点で確認した公開情報を基に、10月9〜11日のインドネシアGPを振り返ったものです。Moto3の王座決定時の成績は10月11日の発表に基づきます。タイヤの開発目的、評価、採用状況、平均ペースの比較はピレリの発表によるものです。











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