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14年の歴史の幕引きにふさわしい、G-NET2023最終選抜戦G-zone

By伊井 覚

12月 15, 2023

全日本ハードエンデューロ選手権G-NET2023
最終選抜戦G-zone
日程:2023年12月10日
場所:広島県山口牧場

2023年12月10日、2010年から始まったハードエンデューロ選手権G-NETが、その歴史に幕を下ろした。来年からは石戸谷蓮が主催するCROSS MISSIONが全日本ハードエンデューロ選手権としてG-NETランカーを引き継ぎ、レースを行なっていく。

最終選抜戦G-zoneが行われたのは広島県の山口牧場。ここはかつてビギナーズエンデューロなどを開催していた場所で、現在でも年一回、爺NET(50歳以上を対象としたハードエンデューロレース)が行われている。この最終選抜戦のためにオーナーである山口氏が一年かけて開拓を行い、そこにG-zone発起人である藤田貴敏が味付けを行った形だ。

G-NETを一年間戦い抜き、最終選抜戦の出場権を得たのはランキングの上位20名。原田皓太、大塚正恒、大津崇博、泉谷之則、西川輝彦、ロッシ高橋、山田礼人、吉良祐哉、木村吏、ZERO、佐々木文豊、鈴木健二、久保山満生、林宏志、森耕輔、吉岡蓮太、藤原慎也、永原達也、羽鳥賢太、髙橋晃となった。

この特別選抜戦G-zoneはG-NETチャンピオンを決める最終戦であると同時に、もう一つ目的がある。それは藤田の「世界に通用するハードエンデューロライダーを育てたい」という想いだ。日本のトップ20人だけをターゲットにコース設定をすることで難易度を高くすることができ、ライダーのレベルアップを促進することができる。

2010年に藤田がプロデュースしたG-NETとしての第一戦、G-IMPACTで優勝した田中太一がその後、エルグベルグロデオを完走したように、このレースから世界へ羽ばたくライダーの誕生を願っている。実際、2021年、2022年にデッキーランドで開催されたG-zoneで優勝している藤原慎也はエルズベルグロデオへの挑戦を続けており、その他の日本人ライダーも世界へと目を向け始めている。

この選抜戦、本来ならば今年のG-NETランキング20位以内のライダーだけのレースなのだが、今年は最後のG-NET戦ということで2012年G-NETチャンピオンの金子岳、2010年・2020年G-NETチャンピオンの堤泰佑が招待された。これまでJNCCやJECのトップライダー、さらに海外のハードエンデューロライダーを招待してきたG-zoneだったが、今年は参戦なし。実は当初は韓国や台湾から参戦希望の声があったのだが、それぞれの事情で頓挫した。

また、日本人唯一のエルズベルグロデオ完走者・田中太一も例年通り賞典外で参戦。KTM京都から2024年式の250EXCが貸与され、万全の体制でレースに臨んだ。

有力選手の中で山田礼人は第一子の誕生が重なり(無事元気な女の子が生まれた!)、不参加。ロッシ高橋は前日土曜日のコース下見中に親族の訃報が届き、急遽不参加となった。

山口牧場は牧草の販売を生業にしており、パドック周辺には見渡す限り一面の牧草地が広がっていた。その一部をコースとして使用しているため、スタートはグラストラックでの一列一斉スタートだ。モトクロスIAのZEROがホールショットを決め、前半をリード。その後、本格的な難セクションに入るまでにZERO、田中、トライアルIASの2人、藤原慎也、吉良祐哉の4台が先頭集団を形成した。

最初のセクション「アヒルロック」に1番乗りしたのは田中。岩が乱立する斜面を、トラクションを巧みに乗せながらスムーズに登り、第2セクションへ。

田中が抜けた頃に2番手のZEROが「アヒルロック」入り口に到着し、そのすぐ後ろに藤原、吉良が続いた。

5番手以降には大津崇博、大塚正恒、原田皓太と、ランキング上位で年間チャンピオンを争うG-NETライダー3人が続いた。

その後、2つのセクションを超えた先にあるCP1の通過順位はZERO、田中、藤原、吉良の順でこの4人が1分以内に固まっており、そこからおよそ3分空いて大津、原田、泉谷、大塚。

次のCP2までの間には5本のヒルクライムがあったが、その中の2本目「朝メシ前」が難所だった。先頭集団4台がなかなか登れずアタックを繰り返したが、結果最初に登ったのは田中、続いてZERO。さらにその後の「ザンネンオッサンヒル」でも先頭集団は足止めをくらい、ここで第2集団を抜け出した泉谷が先頭集団に追いついてきた。

「ザンネンオッサンヒル」を一番に登頂したのは藤原。苦戦する田中、吉良、ZERO、泉谷を尻目に、大きくリードを築いた。この時、原田、大津、大塚はまだ一つ前の「朝メシ前」を攻略中。

しかしこの後、CP2直前のヒルクライム「昼メシ前」が「朝メシ前」を凌ぐ難易度だった。

リードしていた藤原がチャレンジを繰り返す間に後続が続々と「昼メシ前」に到着。先頭集団だけでなく、原田や大塚、西川輝彦ら第2集団まで追いつき、10台ほどが変わるがわるアタックする状態に。なんとここで藤原がフューエルポンプコネクションを破損し、やむなくリタイヤするという衝撃の展開。

何度目のアタックだっただろうか、この「昼メシ前」を最初に抜けたのは、やはりこの男。田中が気合いの走りを披露し、ほぼ直登。観客から大声援を受け、最初にCP2に到達した。続いてZEROが8合目から押し上げ、大津、西川の順でクリアしていった。

CP2を抜けると、沢とキャンバーエリアに入る。

ここでも田中が大きくリードしていたが、2番手でキャンバーに入ってきたのはZERO。特にセクション名はついていないが、前日にロッシ高橋と泉谷が下見していて「ここで絶対に全員落ちます」と言っていたほど強烈な斜面。落ち葉も多くスリッピーで、落ちたら自力ではまず上がれない。

そしてこの直後、ZEROを不運が襲った。なんとキャンバーを抜けたところでバッテリー切れ、セルが回らず、歩いてパドックまで予備バッテリーを取りに行くことになってしまった。

藤原とZEROが先頭集団から姿を消し、レースは田中の独壇場となった。「沢やかロック」と名付けられた、全く爽やかじゃない岩盤を、大勢の観客が息を呑んで見守る中、見事に一発クリア。田中はもはやゴールまでヒルクライムを2本残すのみとなった。

しかし、田中はあくまで賞典外。では、出場ライダーの中でトップは誰だったのか。

CP2を早めに抜けた西川がレースをリードしていた! しかしすぐ後ろにはなんと、CP2は8番手通過だった吉良が追い上げてきていた。

西川はここでスタミナ切れから吉良に先を譲り、田中を除くと吉良がトップに。すぐ後ろには大津。

前回の寺山牧場でも証明している通り、ロックセクションはめっぽう強い吉良。この難所をあっさりと抜け、田中を追いかけていった。

2番手以降は西川、大津、泉谷、原田が集まり、ヘルプイーチアザー(ライダー同士の助け合い)を行なった。

チャンピオン最有力候補の原田はリタイヤを避けるため、無理のないペースで完走を目指しており、ここでもスタミナを残していた。西川、大津を押し上げた後、助けを借りずに泉谷をパッシングすると、休憩している西川も抜いて大津を追った。

大津、原田、西川、泉谷がここで時間をロスしている間に田中がトップでゴール。タイムは2時間36分18秒。藤田は今回のコース設定を終えた後、晴れなら3時間、雨なら4時間レースを考えていたそうだが、多くのライダーにコースを堪能してほしいという考えから晴れでも4時間を採用。そして、結果的に3時間以内にゴールできたのは田中だけだった。

沢で大幅なリードを築き、残されたライダーの中でトップを走っていた吉良だったが、その後のキャンバーで谷側に転落。フロントとリアを樹に挟まれ、あわやリタイヤかという場面があったが、バッグに入れていたノコギリを使ってなんとか脱出し、最後に待つ2本のヒルクライムの1本目「コネコヒル」に到達していた。その7合目でZ字を描いてバイクを押し上げ、2本目の「イノシシのワナ」へ。

このまま吉良が優勝かと思った瞬間、「コネコヒル」の下に大津が現れた。大津も吉良と同じラインで「コネコヒル」を押し上げ、吉良を追って「イノシシのワナ」へ。

その時、吉良はまだ「イノシシのワナ」で苦戦しており、大津の初優勝がチラついた。実際、吉良と大津が「イノシシのワナ」を登った時間差は1分にも満たなかった。そしてそのあとゴールまでの間には、スタート後と同じ爽やかなクロスカントリーセクションが用意されていた。

トライアル出身でテクニック派の吉良に対し、日高ロックスの予選「アイアンロード」で和泉拓や鈴木健二を下したスピード派の大津。

これはゴール前で接戦になるか、と思いきや、大津はもはやスタミナの限界で、持ち前のスピードを発揮できず、優勝は吉良の手に。

吉良のゴールタイムは3時間4分14秒。そのわずか1分19秒後に大津がゴール。続いて泉谷、原田、西川、ZERO、大塚、久保山満生、永原達也までフィニッシュしてレース終了を迎えた。

原田皓太、G-NETチャンピオン獲得の瞬間、待ち受けていた観客や仲間たちからシャンパンのお祝い。

優勝:吉良祐哉(Team YK)/GASGAS EC250F

「皆さんお疲れ様でした。原田さん、チャンピオンおめでとうございます。このG-zoneには去年も参戦するつもりだったのですが、急遽出場できなくなってしまい、一年越しで目標を達成することができました。昨日下見した時点ではキャンバーとヒルクライムばっかりで、苦戦するなって思っていたら、案の定苦戦して。めちゃくちゃ押したし、ノコギリ使って何本も樹を切りました。今日はもう完全に茹でダコです」

2位:大津崇博(おれがたらお)/GASGAS EC300

「今日はとても楽しいコースでした。みんなには“タカは絶対にゴールできない”ってバカにされたんですけど、この順位になったので、嬉しかったです。また来年も応援よろしくお願いします」

3位:泉谷之則(ハスクバーナショップヒラタ自動車iRC)/Husqvarna TE300i

「下見の時点ではすごいキレ散らかして“なんだこのコース”って思っていたのですが、こうして走り終えてみると塾長(藤田)の愛を感じることができたと思います。観客の方がたくさんいて、“ヒルクライムがすごくかっこよかった”と言ってもらえたので、来年もかっこいいヒルクライムを見せられるように頑張りますので、応援よろしくお願いいたします」

4位:原田皓太(八塔寺老人倶楽部with MITANI S3)/KTM 300EXC

「坂と石でひたすら押していました。今日は完走できて本当に嬉しかったです。僕はエンデューロ始めてすぐくらいの時期にこの山口牧場を走らせてもらって、その時に全然走れなくて代走してもらったことがあるんです。そんな思い出のコースでこうして最後のG-NETができたことがすごく嬉しいです。今日のコースは今まで走った山口牧場と同じところは一つもありませんでした。全然知らない山口牧場だったので、めちゃくちゃ楽しかったです」

5位:西川輝彦(チームミワコング)/BETA RR2T250

「沢でちょっと電池切れになってしまって、お手伝いしてもらっちゃいました。ありがとうございました。僕もこの選抜戦に3回出ているのですが、初めて完走できたので、すごく良かったです。来年もまた頑張ります」

6位:ZERO(RG3 Racing)/GASGAS EC300

「最後のG-NETに出ることができてよかったです。このくらいの難易度のコース設定でやってもらえると、すごく走りごたえもありますし、みんなのレベルアップにも繋がるんじゃないかな、と思いました。またこんな大会があったら出たいと思います。ありがとうございました」

7位:大塚正恒(上州TRIALwithモトショップシロタ)/YAMAHA YZ250X

「コースはすごく楽しかったんですけど、めちゃくちゃキツくて、体力不足でこんな結果になったんですけど、時間内にゴールできてよかったです。ありがとうございました」

8位:久保山満生(八塔寺老人倶楽部 青年部)/GASGAS EC300

「原田さんについて3年間くらいG-NETを追いかけてきたのですが、これまで一回も入賞したことがなくて、最後の最後で8位に入賞することができて、とても嬉しいです。来年からもシリーズ戦を追いかけようと思いますので、応援よろしくお願いします」

9位:永原達也(バイクヤートkiyo)/KTM 250EXC

「最高のコースをありがとうございました。すごく楽しかったです。僕は10年間G-NETに出場し続けてきてこの最終選抜戦も3回出ているのですが、今回が初めての完走だったので、目標が達成できてよかったです。大変満足しています。ありがとうございました」

賞典外:田中太一

「皆さんお疲れ様でした。今日は2024年モデルのKTMの250EXCがすごく性能が上がっていたのと、ギヤ比も変わっていて、すごくハードエンデューロがやりやすかったです。コースに関してはやっぱり10年練習していないのでフィジカルが相当キツくて、最後、塾長に暴言を吐きまくってしまったんですけど、今は反省しています。このコースを完走したライダーはよく帰ってきたな、と思います。

まだこの上には世界があります。ちょっとハードルは高いですけど、日本という枠から飛び出して、次の(エルズベルグロデオ)日本人完走者をこの中から見たいな、という気持ちで見守っていますので、今後も頑張ってください」

賞典外の田中を含め、18名中、完走が10台。日本ハードエンデューロライダーのトップを決める戦いは、これにて幕を閉じた。ヒルクライムあり、キャンバーあり、ロックセクションあり、まさに頂上決戦に相応しい舞台で、G-NET14年間を戦い抜いてきた猛者たちが、鎬を削り合った。

世界レベルの走りで観客を魅了した田中。さすがのテクニックで序盤を抜け出した藤原。中盤を支配し、バッテリートラブルで大きくタイムロスするも気合で完走したZERO。ロックセクションで華麗な走りを見せ、その後も諦めずに押し続け優勝を掴んだ吉良。大津、泉谷、久保山もヒルクライムで素晴らしい直登を披露した。大塚、西川のベテラン組も何度力尽きても諦めず、永原は往年のG-NET黒ゼッケンの意地を見せ、3年目のG-zoneで初めての完走をモノにした。

そして、最後のG-NETチャンピオンになった原田皓太。

原田皓太
「最高の気分です。本音を言うと今日のレースもガンガン攻めて勝ってチャンピオンを決めたかったのですが、そこは少しだけセーブして、とにかくバイクを壊さないように完走することを目指して走りました。

僕のエンデューロレースの始まりは琴引マウンテンエンデューロなんです。琴引はこの山口牧場のオーナーの山口さんが主催するレースで、初めてハードエンデューロっぽいことをしたのはこの山口牧場なんです。とても運命的なものを感じますね。

僕は社会人になってから林道を走り始めて、レースに出るようになって、今こうして夢だったG-NETチャンピオンになることができたのですが、ほとんどのライダーは社会人になってから始めるわけじゃないですか。そういう人たちに“ハードエンデューロという競技は社会人になってから始めても、子供の頃から乗ってる人たちと同じステージで戦える”ということを証明できたのかな、と思います。特に田中太一選手は10年前の僕が雑誌でエルズベルグロデオの記事を読んでめちゃくちゃ憧れていた人で、そんな人とこうして一緒に走ることができたことは、未だにすごく不思議な気持ちです。

G-NETが今年で終わってしまうのは、もちろん少し寂しい気持ちはありますけど、良い意味で進化していく上ではこういったことも必要なことだと思います。レースを作るのはライダーですから。来年もライダーは変わりませんので、僕らがトップとしてしっかりやっていけば、自ずと道は拓けるかな、と思います。

来年はディフェンディング・チャンピオンとしてしっかり戦っていきたいと思います。若い人たちがすごく元気で、“原田さんに追いつきたい”って言ってくれるだけでもめちゃくちゃ嬉しいんです。今日は僕の弟子の久保山くんが入賞してくれましたし、これでまたステップアップしてくれたら、すごく嬉しいですね。

今日も田中選手に背中が見えないくらいの差をつけられちゃいましたし、アヤト(山田礼人)もすごく上手いので、やっぱり全盛期のアヤトに勝ちたいですね。2年くらい前までは背中も見えなかったのですが、ようやく追いかけられるところには来たのかな、と思っています。いつもみんなに笑われるんですけど、僕の最終目標は“宇宙一上手くなりたい”なので、これからも上を見続けていきます」

By 伊井 覚

Off1.jp(ANIMALHOUSE)所属。2016年からG-NETの取材を続けるカメラマン兼ライターです。台湾、韓国、ルーマニアクスら海外レースへも取材に出かけ、日本のハードエンデューロシーンにかける情熱は誰にも負けません!

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