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メカのウンチク話 速く安全に気持ちよく走るためのセッティング 〇その心得編#5

速く、そして楽しく走るために欠かせないメカ知識とモトクロッサーの正しい整備方法を紹介するメカのウンチク話。レジェンドメカ、小菅登氏の、タメになるウンチク話をたっぷり紹介いたします。

目次

セッティングはどんな症状を解決できるのか?


実走行ではセッティングがどのように影響するのか、一般的なコーナーリングを例にとり見てみよう。

①ストレート(キャブレター)
コーナー手前のストレートでは車速が伸びないと、他車に抜かれる。ストレートだけはライダーのスキルよりもバイクの性能で勝負が決まるのでキャブセッティングは重要。

②コーナー進入時
▪サスペンション
コーナーの進入部分にはブレーキングによってできたギャップがつき物。ギャップでハネたり振られたりするとブレーキングがあまくなり思い切って突っ込めないし、自分の行きたいラインに入れない。
▪キャブレター
コーナーの進入から立ち上がりではスロットルの開閉が勝負のカギ。エンジンレスポンスが悪いとコーナーリング中にライダーの意思が反映されずに思うようなライン取りができない。結果、走行ラインはバイク任せ。バイクが行く所にしか行けない。

③コーナーリング中
▪サスペンション
コーナーリング中のバイクの姿勢が正しくないとアンダーステアやオーバーステアが出て、自由にラインをコントロールできない。これもサスペンションセッティングで調整できる。
▪キャブレター
フラットな路面のコーナーリング中は、スロットルを開け閉めないパーシャル状態となる。この時、エンジン回転が安定していないと思った通りのラインで走れない。

④バンクを使ったコーナーリング(キャブレター)
柔らかい路面でアウト側のバンクを使う場合、バンクに入った際に砂ホコリをエアクリーナーボックスに吸い込む。キャブセッティングが濃過ぎるとエンジンの回転が落ちて失速してしまう。

⑤コーナー立ち上がり(キャブレター)
立ち上がりではエンジンレスポンスが悪いと加速が鈍ってしまう。また逆にピーキー過ぎるとコーナー出口でスロットルを開けた途端に後輪が流れてしまう。

⑥コーナー脱出加速時▪サスペンション<br立ち上がり側にも後輪によって掘られたギャップがあるもの。コーナーが終わってスロットルを開けているのに凹凸のたびにハネてしまってはトラクションが悪く加速できない。またライダー自身の疲労にも繋がる。
▪キャブレタ
フロントを上げてギャップを避けようとしてもエンジンのツキが悪いとフロントが上がらずそのまま突っ込むことになり危険。さらに高回転域の頭打ちが早いと次のコーナーまでの間に余分なギアチェンジが必要でタイムロスとなる。

それぞれのパートでセッティングされていないバイクの不具合を説明してある。あらためて指摘されると、これらの不具合があってもしようがないものと諦めていたり、自分の走りの中で意識せずにスロットルを戻していたりした人もいるのではないか。こういった症状も全てセッティングしだい。

焦らすようだが、具体的なセッティング作業は連載の後半でじっくり解説する。今回はとりあえずコーナーひとつを見ても、バイクには様々な挙動や症状が発生しており、セッティングによってそれらの不具合を解消できる、ということを知っておいて欲しい。

最後に

ここで紹介したような症状のいくつかはキャブレターとサスペンションが複合的に作用しているので、実際のセッティング時には走行状態を検証しつつセッティング作業を進めていく。

例えば立ち上がりで後輪が流れる場合、キャブセッティングでスロットル開け口のレスポンスを抑える方法がある。スロットルワークがラフなライダーならこの方が好みかもしれない。
しかしコースに大きなジャンプがなく、着地で底付きする心配がないのならリアショックを柔らかくする方向もある。スロットルワークが上手なライダーでなるべくレスポンスを落したくないなら、この方がいいかもしれない。

このあたりのさじ加減は#04で書いたセッティングの幅の中の範囲で調整できる。不具合を解消しつつライダーの好みに合わせることができ、それがセッティングの味付けとなる。
「自分はどんなエンジン特性が好きなのか」これもキャブセッティングをしている間に知ることができる。勉強と言うと仰々しいが、モトクロスが好きならバイクのことを知ることも楽しいはず。
セッティングを変更して間違った方向に行ってしまったら、元に戻せばいいだけの話。それを繰り返しバイクのことやセッティングのことを学んでいくのだ。

トップライダーと呼ばれる人達はみんな、速く走ることに貪欲だ。どうすれば速く走れるのか? どうのようにセッティングすれば速くなるのか? これを常に考え、学んでいるものだ。
セッティングが合っていないバイクで無理して走って、転倒してしまうのはつまらない。自分もバイクも100%力を出し切って走ってこそモトクロスは楽しい。そしてそのカギはセッティングが握っているのだ。

【クレジット】
Text: Dirt Cool
Illustration: Takuma Kitajima
Special Thanks: Noboru Kosuge

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