編集部用バイクとして所有しているTIGER1200 GT PROをテクニクスでローダウン。意外なほどに乗り味が「いい方に」変化した!
試行錯誤から生まれた-3cm
Off1編集部ではトライアンフのTIGER1200GT PROを所有しており、編集部のささやかな休日の相棒として使っている。車でいかなくても済む取材や、ロケハンには積極的に(春・秋限定)TIGER1200で出かけているし、ちょっと急いで愛知に行くなんてときにも重宝しているのだ。もっぱら身長180cmの僕、稲垣が乗ることが多く、十二分に低いシートに満足してきたのだが、身長159cmの伊澤もそろそろ大型二輪免許を取りたいとのたまう。この会社ではオフロードだけでなくオンロードバイクも仕事で乗ることがあるため、正直伊澤にはしっかり大型バイクに慣れてもらいたいという気持ちもある。ということで、サスペンションの専門店テクニクスにローダウンを依頼することにしたのだ。
テクニクスのローダウンサービスは「TLUE」と名付けられている。その意味は「Technix Lowerring Ultimate Evolution(Technixによるローダウンの究極進化)」。ローダウンによるネガティブを生み出さないよう、専用パーツを開発するなど細部まで吟味を重ねたセッティングが施されるサービスだ。電子制御サスペンションの入ったTIGER1200はそもそも他社ではローダウンできないものとされてきたのだが、代表の井上さんに聞いてみたところ「たぶんできますよ。やってみましょう」と二つ返事で引き受けてくれたのであった。テクニクス恐るべし(後日談:こちらTIGER1200 GTはテクニクスのローダウンサービス「TLUE」にはやくもラインナップされている。さらに恐るべしである)。
テスト担当の中木さんによると「何度も組み替えながらベストな方向を探りました。もともとTIGER1200は素性がいいバイクでしたよ。(電子制御のライディング)モードによってしっかり特性が変わりましたね。一番驚いたのはRAINモードかな、かなりプリロードが抜ける感じで足つきもしっかり変わる。だいぶ減衰が抜かれていてふわふわします。晴れの日に乗ると怖いくらいですが、雨の日ならもちろんあり。OFFROADモードもジャンプこなせるくらいにしっかり感がありますね。あと最高速付近ではROADモードの安心感がとても高いと思いました」とのこと。このテスト結果を受け、開発部がモディファイをおこなっていく。
開発の金子さんによれば「最終的にフロントフォークの全長を30mm、リアショックの全長を10mm短くしています。リアショックはリンクを介するので、ざっくり前後ともに3cm下げたような形ですね。結果的にシート高は850mmから820mmに、最低地上高は185mmから175mmに変化しています」とのこと。中木さんも「ストロークを短くしたネガはあまり出なかったですね。大きくストロークさせなければわからないでしょう。若干フロントのほうが大きく下がったように感じ、少しオーバーステアに仕上がっているかもしれませんが、ツーリングの積載などを考えるとここがベストかなと判断させていただきました」と話してくれた。
身長159cmでモンスターマシンに乗れる可能性
ためしに伊澤にまたがってみてもらったが、母指球まで着くことで「怖いけど、乗れなくはないですね。少し練習すれば乗れるようになると思います。車体に重さがあるのでこの-3cmはとても大きいと思いました。以前のTIGER1200なら、乗ろうなんて思わなかったですもん」と言う。
TIGER1200は時速65km以下で走行するときに電子制御でリアサスペンションのプリロードを低減してくれるというアクティブ プリロード リダクション機能が搭載されており、停車時には最大20mm車高を下げてくれるのだが、この機能もしっかり生きている。ホームボタンを1秒以上長押しするとしっかりプリロードが動いてぐーっとサスが沈み込み「うわ、これならいけるかも!」と伊澤もエキサイトする。免許がないので伊澤の出番はここまで。
ともあれ、普段からこのTIGER1200に乗る僕は少し憂鬱だった。身長は180cmあるのでローダウンする必要なんてないんだよな……。
スタンダード時と比べると、ヒザがしっかり曲がってとても低い。うん、確かに安心感は増した。副産物として、足で漕いでバックする時なんかは圧倒的に力が入りやすくなったし、悪くない。ガレた林道なんかでは、このくらい低い方が僕の身長でも嬉しいかも知れないな、と無理矢理納得しようとした。
低重心には意味がある
実際に乗り出してみるとそんな僕の憂鬱さはどこかに吹き飛んでいった。このローダウン仕様のTIGER1200、とてつもなくハンドリングがいいのだ。
コメント