10月4〜6日、モトクロスの国別対抗戦「モトクロス・オブ・ネイションズ(以下:MXoN)」が開催されました。今年の会場はイギリスのマターリーベイジン。モトクロス世界選手権(MXGP)が開催される有名なコースです。日本代表は2022年以来、2年ぶりの参戦。代表メンバーは全日本モトクロス選手権IA1クラスでトップを争う横⼭遥希、⼤倉由揮、そして怪我により欠場となった⼤城魁之輔に代わり渡辺祐介が出場しました。
4日(金)はレース前日として、オープニングセレモニーや予選のスターティンググリッドの選択順を決めるくじ引き、そして各国の紹介を兼ねたパレードが行われました。中でも注目を集めたのがくじ引きです。約40台が出走するMXoNでは、スタートで前に出ることが結果を残すために重要なため、スターティンググリッドの位置は勝負の鍵となります。果たしてくじ運は味方してくれるのか……、抽選により決定された日本のゲートピック順はなんと2番目。幸先良く予選に臨みました。
予選日の5日(土)は天候に恵まれ、コースコンディションも良好かと思われましたが、柔らかい土質によりレースを重ねるごとに深くて長いわだちがコースの各所に発生。トップライダーですらコースアウトしたりとコースの難易度は高く、日本代表もその攻略に苦戦を強いられました。
予選1組目はMXGPクラス。渡辺祐介はスタートの反応が良く、8番手あたりにつけて1コーナーを通過。1周目を12位のポジションで戻り、その後14位を走行しますが途中で転倒。追い上げきれず31位でチェッカーを受けました。
予選2組目はMX2クラス。横⼭遥希はスタートで出遅れたものの、1コーナーでの処理が上手くいき7番手で1周目を戻ってきます。その後さらに追い上げていくかと思われましたが、転倒によりポジションダウン。結果14位でフィニッシュを果たしました。
この時点で日本の合計ポイントは45(渡辺31位+横山14位)。MXoNはチーム3人のうち一番低い順位の1名を省いた順位の合計で競うため、決勝進出枠に入れるか否かは予選3組目に出場する⼤倉由揮に託されました。大倉は練習走行でコース攻略に苦戦していましたが、予選では練習時のラップタイムを10秒以上上回るスピードでレースを進めていきます。1周目を18番手で通過し、その後も安定した走りで順位を上げ、17位でフィニッシュ。
予選の結果、日本は31ポイント(横山14位+大倉17位)を獲得し、エストニアと同点で予選通過ラインの19位に並ぶ状況に。しかしポイントに加算しない1レースの順位がエストニアの方が上だったため、日本は20位となり、惜しくも予選通過は叶いませんでした。しかし、MXoNではA決勝進出への1枠をかけてB決勝が行われます。日本チームはすぐに気持ちを切り替え、その1枠(B決勝優勝)を勝ち取るべく決勝日に臨みました。
決勝日の6日(日)、B決勝はウォームアップ(練習走行)後に行われました。予選とは異なりチーム全員で出場し、競い合う形式となります。他のチームとのポイント差は僅差で、B決勝優勝をかけたバトルは激戦となることが予想されました。日本チームはまず3名のうち誰かひとりでもスタートで前に出ることを目標に作戦を立て、予選で一番良い順位を残した横山がイン側、大倉が中央付近、そして渡辺がアウト側のグリッドを選択しレースに挑みました。しかしスタート直後、1コーナーを曲がる際に大倉が前のライダーのリヤタイヤに引っかかったことで転倒。身体を地面に打ちつけた痛みで復帰することはできず、そのままリタイヤとなってしまいます。
横山と渡辺の順位で決勝進出が決まる、緊張感のある状況の中、横山は1コーナーを上手く抜け出し10番手付近から追い上げます。荒れた路面を攻略し、安定感のある走りで着実に追い上げ、粘り強い走りで6位フィニッシュ。一方渡辺は序盤で18番手付近につけますが、他者と接触し転倒。リカバリーにも時間がかかり、追い上げきれず27位でゴールとなりました。
結果、日本は合計33ポイントで8位。決勝に進むことはできず、総合27位という結果に終わりました。
横⼭遥希
「決勝日はわだちがコース整備によって平らになっていて、フラットな状態でウォームアップができました。ただ、それでも土が柔らかくてすぐにわだちができてしまって、難しいコンディションにはなったのですが、予選の時よりは対応できたと感じています。日本にはないようなわだちとコースの荒れ方で、相手も世界各国の強豪たちということで、すんなりパスすることはできませんでしたが、着実に順位を上げていくことができたのはよかったです。今回予選で転倒してしまったことは自分の今後の課題でもあります。引き続きスピードを上げる練習をしつつ、転倒をしない安定感のある走りができるようにこれからも頑張っていきます」
⼤倉由揮
「フリープラクティスではタイムが伸びなかったのですが、アタックした時に人が絡んできたりと色々あったので、まだまだタイムは伸ばせるなという感覚で予選に挑みました。スタート出たら前に行けるというのはわかっていたので、B決勝も気合いを入れて挑んだのですが、上手くいかなかったですね。僕がスタートを決めていたら決勝に行ける可能性もあったと思うので、そのチャンスを掴みきれなかったことが悔しいです。ただ、経験したことのないほど難しいコースで走れて自分の経験値が上がりましたし、その中で自分なりに工夫してペースを上げていけたことは前向きに思っています。もう一度この舞台に立たせてもらえる時には、もっと力強い走りをして決勝で最高の走りをしたいと思うので、これからも頑張っていきます」
渡辺祐介
「初めてのネイションズ、僕にとっては夢の舞台だったので、出場することができて嬉しかったです。ただ、あの難しいコースに対応しきれませんでした。怪我明けということもあり60〜70%の調子で走っていました。今の身体では厳しいということも頭ではわかっていたのですが、やはりチームにもっと貢献したかったですし、悔しいです。ただ、レースを通して世界各国の強豪と走ることができたのは自分にとって勉強になりましたし、刺激をもらいました。来年はしっかり予選通過できるように、成長していきます」
MXoNで活躍したZETA Racingパーツ
ここではMXoNの現地で使用されたアイテムをご紹介。
ZETA Racing
プロラウンチコントロール
¥12,980(税込)
https://www.dirtbikeplus.jp/products/detail/35618
MXoNで日本チームは「まずはスタートで前に出る」ことを目標にレースに挑みました。そこで使用されたのがZETA Racingのプロラウンチコントロール。前モデルから改良されたこの製品は深めのセッティングがしやすくなり、メッシュスタートにも対応しています。ライダーたちは現地でマシンを調達しますが、プロラウンチコントロールは欠かさず日本から持参し、取り付けたとのこと。実際にメッシュスタートだったMXoNでも活躍し、約40台が一斉にスタートする中、各ライダースタートで良い反応を見せ1コーナーに入っていきました。
全日本の舞台でもFOXのウエアを使用している大倉選手と横山選手。
渡辺選手はZETA Racingのバーパッドを使用。白地に赤の日の丸、ブランドロゴに加えてJAPANとライダーの名前を刻んだ、日本代表特別仕様です。
今回日本チームはA決勝へ進出することはできませんでしたが、この結果を糧として、すでに来年に意識を向けている模様。これからさらに強くなっていく日本チームに今後も注目です。
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