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26歳の山本礼人が念願のG-NETタイトルを獲得! HINO HARD ENDURO秋の陣

11月 22, 2021


G-NET

第3戦 HINO HARD ENDURO

日程:2021年11月13日(土)、14日(日)

場所:群馬県日野カントリーオフロードランド

 

今年のG-NETは山本礼人がとにかく強い。開幕戦奈良、第二戦広島と連勝しており、初のチャンピオンに王手をかけた状態だ。2位にはどちらも鈴木健二が入っており、この日野で勝てば、まだ逆転の目は残されている。

 

日野カントリーという極上のヤマ
西日本の猛者が関東に集結

今年のG-NETは北海道シリーズが中止となったことで、奈良、広島、群馬、四国というスケジュールになっており、東日本は群馬・日野のみだ。しかし、この日野カントリーオフロードランドは、関東とは思えない広大な山々を敷地に持っており、そのポテンシャルはどこにも負けないコース。

 

今年はまた新たなセクションが多数開拓されており、特に「ワイヤーマウンテン」と「エムスリー」と名付けられたヒルクライムは難易度が高く、土曜日に行われた下見でも多くのライダーが長い時間をかけてチェックしていたようだ。

 

G-NETの代表を栗田武が受け継いでからは毎年この日野が最終戦の舞台となっていたのだが、今年は四国の特別選抜戦があるため、今大会はまだ第三戦。しかし、有効ポイント制が取られているため、すでに2勝を挙げている山本がこの日野で勝てば、最終戦を待たずしてここでチャンピオンが決定してしまう図式だ。

また、怪我が完治したV6王者・高橋博はもちろん、2020チャンピオンの水上泰佑をはじめ、G-NET黒ゼッケンライダー(前年度ランキング9位以内)原田皓太、佐々木文豊、永原達也、中野誠也がエントリーしているほか、元黒ゼッケン組の上福浦明男、大西実、泉谷之則、全日本ロードレース選手権JSB1000ランキング2位の濱原颯道、元トライアルIA大塚正恒、AD/tacこと和泉拓、モトクロスIAの覆面ライダーZERO、CGCアイドル・メイドちゃん、フリースタイルモトクロスのレジェンドDAICEなど、多数の実力者がエントリーしており、順位の予想のつかないレースとなった。

 

愛知や岐阜などハードエンデューロの盛んな中日本からはもちろん、広島や岡山、九州からも有力ライダーが集結したのだ。G-NET戦を追いかけているから、というのももちろん理由の一つだが、やはりこの日野の山が持つ魅力が大きいところだろう。

 

レースをリードしたのは地元・大塚

注目の新型YZ125も

G-NETクラスはスタートしてすぐに大きな落とし穴が出現しており、そこでのライン取りがスタートダッシュを大きく左右した。ここを一番に抜けて行ったのは鈴木。続いて大塚、木村つかさ。山本はアウト側のラインを選んだことでいきなり前転、出遅れてしまう。また、原田もスタートでエンジンが停まるトラブルが発生し、1列目最後尾となってしまった。

 

そこから「竹藪」「ヤブ坂」「ファーストヒル」などを経由して、第一の難所「ワイヤーマウンテン」へと先頭が到着した。トップはやはり鈴木。鈴木の今回のマシンは新型のYZ125、リリースされたばかりで絶賛プロモーション中ということもあり、その実力を示すために持ち込んだ。他のG-NET黒ゼッケンライダーはみな250ccや300ccのマシンを使う中、125ccの小排気量のエンジンは不利と思われたが、そこは鈴木。持ち前のワイドオープンで、「ワイヤーマウンテン」の中腹まで登ると、そこからはZの字の切るようにバイクを押したり乗ったりしながら押し上げていく。

本来、モトクロッサーであるYZ125だが、スプロケットのショート化とリアサスによるローダウンを行い、ハードエンデューロを適した形に仕上げてきた。そして、やはりヒルクライムを押し上げる時にはその軽さが強大な武器になる。

 

鈴木の少し下では山本、高橋、水上ら他のG-NETライダーが同じように、登れるラインを探して試行錯誤している。その時だった。1度目のアタックに失敗した大塚が、ラインを見極め、2度目のアタックを敢行。ほとんど直登とも言える完璧な形で「ワイヤーマウンテン」を登頂し、トップを奪った。それに鈴木、山本、高橋が続く形で登頂。水上はここで大きくトップから離されてしまう。

また、ここ「ワイヤーマウンテン」はちょうど下から登る方向を見ると太陽が眩しく、速度を乗せて木々の間を縫って走っていくのは危険なレベルで、それも難易度を押し上げていたようだ。

 

次に「亀山」「BOCヒル」を越え、トップ大塚のままでコース全体の7割ほどの地点にある「スーパーエンデュヒル」に到達した時には、レース時間は40分ほど経過していた。大塚、山本、鈴木、高橋、水上の順で「スーパーエンデュヒル」を何事もなかったかのようにクリア。戦いの舞台は最後の難所「エムスリー」へと移って行った。

 

<h2>ここ5年のG-NETで最難

「エムスリー」の死闘</h2>

 

取材班がこの「エムスリー」に到着した時、抱いた素直な感想はこうだ「ここをセクションと言い張るのは無理がある」。どう見ても、バイクに乗って登れるような斜度ではないと感じたからだ。

 

しかし、すでに頂上から見える位置まで大塚はコマを進めていたから驚きだ。だが、流石の元トライアルIA大塚を持ってしても、難所ばかりが続くハードエンデューロレース、体力の限界を迎えたようで、バイクを降りてヘルメットを脱ぎ、呼吸を整えていたところだった。

 

この「エムスリー」、バイクに乗って勢いよく登って来られるのはどうやっても中腹までで、そこから上はやはり「ワイヤーマウンテン」のようにバイクを押し上げるしかないセクションだった。これは世界的に見てもハードエンデューロを突き詰めていけば、どうしてもそういうセクションになっていくのだ。大塚が休憩していたところは、まさにその押し上げる始まりの地点だった。

ここで、大塚が回復する前に山本が追いついてきた。大塚は山本にラインを譲り、先に行かせることを選択。思えばこれが、勝敗を決定づけた瞬間だった。大塚は50歳、山本は26歳。体力的なものが勝敗を分けたと言ってもいいかもしれない。

 

本当に少しづつ、まさに一歩、また一歩と山本がバイクと共に頂上に近づいていく。大塚も、その後を追うように動き出していた。そこに、後続が追いついてきた。鈴木、高橋だけでなく、「ワイヤーマウンテン」で大きく差がついたはずの水上や、佐々木、永原、ZEROら、有力ライダーのほとんどがここに集った。

まずは山本が抜けた。

 

ここを抜ければゴールまではもう簡単なセクション2つを残すのみ。山本がトップで2周目に突入した。2番手で登頂を果たすのは当然、他のライダーに大きく差をつけていた大塚と思われた。だが、スタートでエンジンストップを喫し、ハードクラスの渋滞に飲まれてしまっていたはずの原田が、ここで追いつき、うまく抜けてきた。

最後の最後で転倒してしまった大塚を抜き去り、原田が2位に浮上。続いて大塚が抜けた。ここまでが、「エムスリー」を自力で登頂した3台となった。「自力で」と書いたのはマーシャルや観客によるヘルプではない。4台目以降はライダー同士で引っ張り合い、押し上げたのだ。すでに順位は混乱を極めており、ここで登頂した順番は「たまたま上げやすい位置にバイクがあった」順だ。

 

4位は佐々木、5位は三輪、6位に鈴木が入った。

 

そして驚いたのが、山本の2周目だ。確かに、時間はあった。今大会は計測終了まで含めると4時間のレース時間があったため、単純に考えると、約1時間40分で一周した山本が2周目を回ることは不可能ではなかった。しかし、この「エムスリー」をもう一度、しかも1周目のライダーがたくさんいる中で抜けてくることは、考えにくかった。

しかし山本は戻ってきた。今大会ただ1人2周を回り、優勝。2位以降は1周目を周回した順番、つまり「エムスリー」を登頂した順番となった。

 

<h2>3年前の悔しさをバネに成長

新チャンピオン山本の目標は?</h2>

 

全日本ロードレースや全日本モトクロス、全日本エンデューロなど、バイクを使ったほとんどの全日本競技のチャンピオンは、幼い頃からバイクに親しみ、人生をかけてきたライダーのみが辿り着ける高みだと思うし、そうあるべきだ。しかし、ハードエンデューロはそうではない。ノーライセンス(山本は今年初めてNBライセンスを取得した)のライダーが、他競技のIAライダーと同じレベルで戦い、勝つことができるのだ。

「今日のコースはすごく難しかったです。それでもなんとか2周できましたね。体力的にはまだまだいけますよ。時間があるなら、もう2周できます」

 

とレースを終えた直後の山本は笑顔で答えてくれた。

 

「僕はハードエンデューロを初めて10年、16歳でいま26歳です。G-NETに出始めてからは7年ですかね。2018年に一度、最後までロッシさん(高橋)と争ってギリギリチャンピオンを逃してしまったことがあるのですが、あれから3年、ようやく本当のチャンピオンになれました。

 

僕はモトクロスもトライアルもエンデューロもライセンスを持っていなくて、自転車トライアル出身なんですけど、やっと今年からJECに出始めて、エンデューロNBなんです。だけど、JECを始めてから移動路のスピードも上がったし体力もついてきて、レース中も気持ちを切らさずに走れるようになってきました。

 

僕はケンジさん(鈴木)やロッシさんの背中を見て、彼らに勝てるようなライダーになりたいと思ってずっと頑張ってきました。GASGAS高槻さん、ビバーク大阪さん、シンコータイヤさんをはじめ、多くのスポンサー様に応援していただいて、今はすごくいい環境でレースができています。

 

僕にとってはG-NETのチャンピオンはゴールではなくて、海外のレースでどこまで通用するのか試してみたいんです。ハードエンデューロのプロがいるヨーロッパのルーマニアクスやSEA TO SKYといったレースに挑戦していきたいと考えています」

 

と山本。

 

また、2位に入った原田もノーライセンスの29歳。

「2018年に一緒にSEA TO SKYに参戦したアヤト(山本)と一緒に表彰台に乗ることができて、すごく嬉しいです。しかもアヤトはチャンピオンですからね、最高です」と原田。原田もバイクを始めたのは23歳の時という。そんなライダーたちが、幼少からバイクに乗ってきた名だたるIAライダーに打ち勝つことができるのが、ハードエンデューロの魅力の一つなのかもしれない。

 

そして3位が大塚。ハードエンデューロを始めてわずか2年足らずで、G-NETの表彰台を手にした。

「僕は昔トライアルをやっていて、ロッシとほぼ同期なんです。仕事が忙しくなってトライアルはやめちゃったんですが、去年くらいから仕事も落ち着いてきたので、ちょっと刺激のあるバイクに乗りたいな、と思ってハードエンデューロを始めました。やっと表彰台に乗ることができて、本当に嬉しいです」

と満面の笑顔。

JNCCは馬場大貴、JECは飯塚翼、G-NETは山本礼人と、今年は3つのエンデューロ・クロスカントリー種目全てで20代のチャンピオンが誕生した。近年ではSNSの活用によって若いライダーも増えてきており、エンデューロという競技全体が確実に若返ってきている。