本田技研工業は12月20日、都内にて「Honda E-Clutch(ホンダ イークラッチ)」の技術説明会を開催しました。
「Honda E-Clutch」はイタリア・ミラノで行われたモーターサイクルショー「EICMA(エイクマ) 2023」で初公開された新技術。
説明会では同技術の開発責任者 小野惇也氏などが登壇し、開発の背景や今後の展開について語っています。
では、「Honda E-Clutch」とはどういった技術なのでしょうか。
そもそも、クラッチとは動力を伝達・遮断する機構で、主に発進時や停車時、変速時に操作します。
手動でのクラッチ操作には、自由な操作性と運転の楽しさがありますが、運転の難しさやわずらわしさを感じることも。
そこで、クラッチ操作で生まれるライダーの負担を解決するために開発されたのが「Honda E-Clutch」です。
「Honda E-Clutch」はMT車で必要だったクラッチ操作を自動で制御し、ライダーがクラッチを操作しなくても、スムーズな加減速を実現しました。
発進時や減速時はもちろん、停止時ですらクラッチ操作は不要になり、徐行時のわずらわしい半クラッチからも解放されます。
もっとも特徴的なのは、自動制御のON・OFFを任意で選択できる点で、OFF時は通常のMT車のようなライディングが可能。
つまり「Honda E-Clutch」なら、市街地や渋滞ではAT車のように楽に運転でき、ワインディングロードではライディングを十分に楽しむことができます。
もし、ライダーが自動制御ON時にクラッチ操作を行っても、自動制御は一時的にOFFになり、1~5秒後に復帰します。
復帰するまでは通常通りクラッチ操作を行わないとエンストしてしまうので、慣れるまでは戸惑うこともありそうです。
Uターンなど、自身のタイミングで発進したいときでも、自動制御のON・OFFに関わらずクラッチ操作ができるのは便利な点。
また、クラッチレバーの操作感は、通常のMT車と同じで、レバー操作が重くなることはありません。
「Honda E-Clutch」が故障した場合も、操作感が変わることはなく、普段通りに運転することが可能です。
「Honda E-Clutch」と似たような技術といえば、「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」。
「DCT」では、クラッチ操作の自動化、変速は任意で操作することが可能で、ライダーはスロットルとブレーキの操作のみに集中できます。
自動でクラッチの制御が行われる点は「Honda E-Clutch」と同じですが、「DCT」はライダーがクラッチ操作を行うことができません。
一方で、「DCT」は自動で変速することができますが、「Honda E-Clutch」は変速の操作は手動のみ。
ほかにも、クラッチ操作をせずに変速ができる点では「クイックシフター」にも近いものを感じますが、それもそのはず。
「クイックシフター」とはエンジンの点火時期や燃料の噴射タイミングを制御することで、クラッチを握ることなく変速が可能になりました。
「Honda E-Clutch」は「クイックシフター」に加え、クラッチも制御することで「クイックシフター」単体で発生する若干のギクシャクやタイムラグを軽減させることができ、発進時や停車時のクラッチ操作からも解放されます。
手動で運転する場合、変速などで発生するギクシャクはクラッチを優しくつなぐことで軽減できますが、その繊細なクラッチ操作を自動化し、スムーズなライディングを誰でも再現することが可能になりました。
「Honda E-Clutch」は「クイックシフター」単体ではできない細やかな制御を行うことで、幅広いライダーにワンランク上の走りを提供します。
本田技研工業の新技術「Honda E-Clutch」はライダーの様々なニーズに答えることができる夢のような技術。
日本での発売が待ち遠しい中、技術説明会の質疑応答で以下のような発表がありました。
「EICMA 2023」では「CB650R」に搭載されていましたが、同じエンジンの「CBR650R」にも搭載でき、それぞれ「Honda E-Clutch」の有無が選択式になります。
今後の展開は、2024年初頭より世界で順次発売予定とされ、日本でも大きく遅れることなく発売されるようです。
気になる価格の発表はありませんでしたが、「Honda E-Clutch」の有無で7万円前後の差が出ると予想されています。
発表された搭載車以外にも、「Honda E-Clutch」は技術的には車種を選ばず搭載することが可能なので、対応車種が増える可能性も。
長距離や渋滞は楽で快適に走りたいが、ワインディングはMT車のようにしっかりとバイクを操りたい。
そのような人には「Honda E-Clutch」が最適といえそうです。
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