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G-NET第3戦CGC大町 ″本気でやらなきゃ、勝てなかった″勝利を睨み続けたZEROがG-NET初優勝

全日本ハードエンデューロ選手権G-NET2023

第3戦 CGC信州大町HARD ENDURO

日程:2023年5月20日(土)、21日(日)

場所:長野県信州大町チャレンジフィールド

今年のG-NETは面白い。2021年、2022年と無敵っぷりを披露したチャンピオン山田礼人が藤原慎也に破れて初戦を落としたと思いきや、第2戦では原田皓太が初優勝。一戦ごとにジャパニーズ・ハードエンデューロ・カルチャーがレベルアップする足音が聞こえるようだ

サバイバルな2DAYS開催

独特なパルクフェルメルール

全日本ハードエンデューロ選手権G-NETが第3戦を迎えた。開幕戦は藤原慎也、第2戦は原田皓太が優勝し、ここまではランキングトップが原田、2位が森耕輔、3位が大津崇博という順位できている。

第3戦の舞台はCGC大町。エントリーハードエンデューロとして中部地方を中心に絶大な人気を誇るCGCは、おたまじゃくしクラス(初心者)、おひなさまクラス(女性)、ミニバイククラス、さわやかクラス(初級者)、ゲロゲロクラス(中級者)の5つのクラスに分けられており、今回G-NETクラスはさわやかクラス、ゲロゲロクラスと混走という形をとって2DAYSで行われた。

土曜日にさわやかクラスを走り、レースを終えたG-NETクラスのライダーはパルクフェルメ(ラリーやオンタイムエンデューロなどでレースが2日間以上にわたって開催される時、レース時間外に車両を隔離することで管理する車両保管所)にバイクを入れ、翌日のゲロゲロクラスのスタートまでバイクに触ることは禁じられる。日本国内で一般に認知されているのは全日本エンデューロ選手権JECのパルクフェルメだが、それとは違いワークタイム(レーススタート前に整備することが許された時間)は与えられず、土曜日のさわやかクラス2時間と日曜日のゲロゲロクラス3時間のレース時間の中でのみ、給油整備が許された。また、ライダー以外が給油や整備を行っても良いし、タイヤ交換もホイールごと交換して良いルールになっていた。

G-NET戦は年間シリーズ戦でありながらレースによってそのコース難易度は大きく変化する。第2戦日野はトップライダーが誰も1周できない超難関のコース設定だったが、このCGC大町はエントリーレースとの併催ということもあり、トップライダーであれば30分ほどで1周できる設定になっていた。もちろんエントリーライダーにとっては1周することすら難しいのだが……。なお、チャンピオンシップのポイントは2日間の順位の合計で1大会分として加算される。

完全ドライのハイスピードレース
JNCC王者・渡辺学が参戦

天候は2日間とも快晴。コースはこれ以上ないほどのベストコンディションとなった。

開幕戦の藤原慎也、第2戦の野本佳章のように、今大会にも強力なスポット参戦ライダーがいた。JNCCで5度の年間チャンピオンを獲得している渡辺学だ。スピードはもちろんだが、タフネスもあり、テクニックも持ち合わせている。渡辺に対抗できるとしたら、やはりJNCCで3度チャンピオンを取っている鈴木健二やZEROら、スピード競技のトップカテゴリーで戦ってきたライダーだろう。さらにJEC、JNCCに参戦し続けてきたベテラン小菅浩司も参戦していた。

マディコンディションならまだしも、ドライの大町でハードエンデューロライダーたちがどこまでそのハイスピードについていけるのか……。

さわやかクラスのコースは全体的に反時計回り。前半にウッズセクションがあり、後半には大町名物のロングヒルクライム「チャレンジヒル」を含むヒルクライムやダウンヒルが待ち構えていた。

スタートはG-NET黒ゼッケンを除くゼッケン順だ。1列10台なので#10〜19が1列目、2列目に#20〜29と続いていく。最後は#51鈴木健二と#52渡辺学、そして#1〜9のG-NET黒ゼッケンたちが並んだ。さらにその後方には2時間かけて1周を目指す134台のさわやかクラスのライダーたちが控えていて、G-NETライダーたちは2周目からそのさわやかクラスのライダーたちを抜きながら周回しなければいけないことになる。

序盤のレースをリードしたのは#17で1列目をゲットした西川輝彦。G-NETは#1〜9だけが固定ゼッケンで、#10以降はエントリー順に異なるゼッケンが割り当てられるのだが、必ずと言っていいほど1列目からホールショットを奪う西川からは、黒ゼッケン獲得への本気度が伺える。

しかし「オイルショック」から「トリスヒル」を抜け「コアラの森」に入る頃にはZEROが西川の真後ろに追いつき、ほぼ一本ラインの「タイガーウッズ」で西川を後ろから攻め立て続け、出口でパッシング。

そこからはZEROの独壇場だった。

1周目の順位はトップがZEROでラップタイムが18分40秒。それに続いたのは西川で19分21秒、そして僅差で大津が19分24秒。そのあとは原田、渡辺、泉谷という順でトップグループが形成された。2周目に入ると、さわやかクラスのライダーが難所で渋滞していて、助走やラインが限定されてしまう。ただ速く走るだけでなく、より難しいラインを正確にクリアするテクニックが求められた。

最初の渋滞ポイントは「オイルショック」だった。さらに「先着ヒル」などウッズ内ではいたる所にライダーが溜まっており、1周目よりペースダウンは避けられない。それでもZEROは2周目を20分22秒で周回し、3周目から再びペースアップ。5周目にはベストラップとなる17分54秒を記録。ただ一人6周を回って優勝を果たした。

1周目は4番手だった原田だったが、まるで渋滞の影響を感じさせず20分台でコンスタントに周回を重ね、5周を周回。ZEROに次いで2位。

3位に入ったのは木村吏。1周目11位からの追い上げで、やはり後半にペースダウンしなかった。4位にはフロントスプロケットを10丁にしてきたという鈴木健二。5位はV6チャンピオン、ロッシ高橋。6位に若手筆頭、大津崇博。7位には足の指を骨折しつつも西川輝彦が入った。

実は渡辺の目的は優勝ではなかった。主戦場であるJNCCでの走破力をあげるための練習であり、スキルと経験値の向上を目指しての出場だったため、ペースをコントロールしつつ8位でチェッカー。渡辺のマシンはJNCC仕様からビッグタンクをノーマルタンクに戻しただけで、ハードエンデューロの定番であるファイナルの変更すらしていなかった。

9位に山田礼人。10位、大塚正恒。1周目好調だった泉谷は2周目に切れていたコーステープに翻弄されコースを見失い、約3分をロスして11位という悔しい結果になった。

俺はレースしに来てるから
今日は絶対に負けられない

ZEROにとって、このCGC大町は特別だった。

ZEROはG-NETシリーズにフル参戦してチャンピオンを狙っているライダーではない。JNCCやCROSS MISSIONにも出るし、出場しないG-NETレースもある。

それでも今大会は「勝ち」にこだわっていた。ZEROは2022年春の日野ハードで2位に入っていたが、それ以来G-NETの表彰台から遠ざかっていた。原因は仕事が多忙なことによる練習時間不足。本来のポテンシャルが発揮できないことにもどかしさを感じたZEROは、第2戦日野ハードが終わってからRG3サスペンションの福森寿明氏にレース活動の全面的なサポートを依頼。マシンのメンテナンスや車の運転、レース中の細かいサポートまで含めて一任しており、そのサポートに報いるためにも、今大会はどうしても勝ちたかったという。

ZEROは、今大会で優勝するための最大の障壁は渡辺学だと考えていた。だからぶっちぎりで先頭を走っていても、必ず後ろから渡辺が追ってくると考え、全力で逃げ続けたのだった。そしてそのZEROを追いかけて原田がペースアップし、ひいては全体がハイペースなレースになったのだった。

CGCは選手権でありながら勝ちにこだわるライダーは少ない。大半のライダーはライバルと助け合ったりアドバイスしあったりしながら楽しみながら周回を目指す。そのため、ZEROの必死の走りは、ともすれば場違いに見えたかもしれない。YouTubeにアップされているZEROのヘルメットカメラには、他のライダーを少し強引にパスした後「ごめんな。でも俺は今日レースしに来てるから。絶対に負けるわけにはいかんのや」という独白が録音されている。

トップライダーたちは最後の1周を終えたあと、計測時間終了までの間、マシンの整備に追われた。タイヤ交換をする者、エアクリーナーを交換する者、ガソリンを補充する者……。例えばスタートから1時間50分で周回を終えたらレース時間は残り10分。もう1周するのは不可能だ。いつもならそれでも次の周に突入するのだが、今回はその残り10分は翌日に向けて貴重な整備時間となった。逆に2時間ジャストでレースを終えてしまうと、ガソリンを補充する時間すらなく、翌日のレーススタートを迎える形になってしまう。

DAY2、止められないZERO
鈴木健二が驚異の追い上げ

DAY2、ゲロゲロクラスと混走のレースは前日とは逆回しの設定。さらにいくつもの難所が追加されており、その中でも短距離のヒルクライムながら最後が反り返るように垂直に近いステアになっている「愛情返し」と、そのすぐ後に控えるロングヒルクライム「愛情一本」は難しく、勝負の分かれ目になることが予想された。

DAY1のリザルト順にスターティンググリッドに並ぶ。ZEROは最もイン側を選択し、隣に原田が入った。

ホールショットは「土曜日の優勝から同じ感覚のままスタートできた」と気合十分のZERO。後ろに大津、渡辺、原田が続いた。最初のセクション「あくいの一本」でロッシ高橋がまさかのミステイクで出遅れてしまう。

さらにレース時間外に整備することができないという特殊なパルクフェルメのルールが、結果に大きな影響を与えた。例えば泉谷はスタート地点でフロントタイヤのパンクに気がつき、修理してからのスタートを選択。鈴木はスタートしてリアタイヤのパンクに気づいたが、1周してから修理することにしてそのままレースを続けた。DAY1を3位で終えた木村もスタート後の整備のために遅いスタートになってしまった。

ホールショットを獲ったZEROはそのままレースをリードしたが、チャレンジヒルの下りで渡辺が猛スピードでパッシング。それからしばらく渡辺がトップを走ったが、ZEROは何度か追いつき、抜き返そうとするガッツを見せた。中盤のロックセクション「ダレノガレ」で渡辺が転倒した隙にZEROが再びトップに。さらに「愛情返し」ではZEROが登頂したところで転倒し、そこに渡辺が突っ込むというバチバチの展開。いち早く復帰したZEROがトップを守り、渡辺が復帰する前に鈴木と原田がクリアしてZEROを追走した。

続く「愛情一本」を抜けた先のウッズ「あらかわキャンバー」ではZEROがコースを見失っているうちに原田がトップに出て、そこからは原田、ZEROの順でレースが展開した。1周目をトップで帰ってきたのは原田で、タイムは23分58秒。続くZEROが24分10秒。

3周目の「愛情一本」でミスした原田をZEROがパスし、そこからはもうZEROのレースだった。

1周目を終えた後にパンク修理のためにタイヤ交換を行い順位を落としていた鈴木健二だが、後半にペースアップ。最終周となる6周目になんと2番手の原田を捉えて僅差で追走。そして原田が周遅れのライダーと絡んでいる間にパッシングして2番手に浮上した。結果、DAY2は優勝ZERO、2位鈴木、3位原田、4位大津、5位大塚となった。

ZERO
「今日は1周目にトップに出たんですけど、コースを覚えられなくて迷ってしまったので、コータくんに前を走ってもらって、ラインを盗みつつコースを覚えさせてもらいました。中盤くらいまでそのまま後ろにつかせてもらおうと思っていたのですが、3周目で気づいたらコータくんが後ろにいたので、そこからは全力でスパートをかけて引き離しました。途中給油した後になぜかエンジンがかからなくなってしまって、1〜2分ロスしてしまったんですけど、そこからは自分のペースで淡々と走って優勝することができました。

春の日野ハードに出た時に、仕事が忙しくて練習ができていなかったせいか、全然うまく走れなかったんです。今年は目標として『参戦するハードエンデューロレースは全戦優勝を目指す』『自分の理想の走りを全開でする』というのを掲げていたので、それができていないのがすごく悔しかったんですね。そこで日野が終わってからRG3サスペンションの福森さんにサポートをお願いして、バイクに乗ることだけに集中できる環境を作ってもらいました。

それが本当に大きかった。今日は久しぶりにバイクに乗れている感覚がありました。平日にバイクを預けてメンテしてもらったりして、僕はバイクに乗ることだけに集中させてもらうことができたんです。あとはゴールデンウィークに佐々木(文豊)さんのところに合宿に行ってしっかり乗り込んだのも大きかったです。

CGCというお祭りレースなのに、本気で走ってしまって、他のクラスのライダーを驚かせてしまったかもしれませんが、G-NETのみんなのレベルが高すぎて、本気でプッシュしないと勝てませんでした。今回はコース難度がそこまで高くなく、僕にとっては有利なレースだったので勝てましたが、テクニック的にはまだまだだな、と思うところがたくさんあります。でもG-NET初優勝、めちゃくちゃ嬉しいですね! 僕は日高には行けないので次戦はブラックバレー広島になると思いますが、そこでも優勝を目指します」


原田皓太
「めちゃくちゃ楽しかったです。特に土曜日のさわやかクラスがいいですね。でも2日間とも晴れてしまったので僕的にはバッドコンディションでした。難しいところがあまりなかったので、それが辛かったです。

1周目はZEROと渡辺学さんの後ろを走らせてもらったのですが、ゲレンデのスピードが速すぎますよね。トップに出たあと3周目にZEROに抜かれるまでは本当に必死で、120%くらいで走ってました。頑張りましたよ、本当に。抜かれてからも頑張って追いつこうと思って追いかけたのですが、やっぱりセクションじゃないところのアベレージスピードがZEROの方が速いので、なかなか難しかったです。

次戦は初めての日高ロックスです。今回と打って変わって短時間集中型で延々ロックだと聞いているので、頑張ります」


鈴木健二
「今回は乗れていたんでしょうね。転倒もなく順調に走れました。最近はこの順位に入ることがなかったので、久しぶりにちゃんとレースができて嬉しいです。実はDAY2はスタートしたらリアタイヤがパンクしちゃっていて、なんとか1周走ってパドックに帰ってきてタイヤ交換して再スタートしました。他のライダーがみなさん上手いので、後ろから見ながら参考にして走らせてもらいました。

それと今回はISAさんに10丁のフロントスプロケットを作っていただいて、実戦に初投入しました。極低速を使うことができるし、ヒルクライムではパワーバンドに入れないでデロデロと登ることができます。YZ125Xに10-50丁はオススメできると思います」


大津崇博
「ハイスピードレースも楽しいですね。最初の1〜2周は体が慣れていなくて辛かったんですけど、だんだん楽しくなってきました。でも転びまくりましたけどね。ハイスピードでコーナリングするのが難しかったです。いろんなところで渋滞が起きてるんですけど、みんな疲れてて動いてくれないので、頑張って間を縫って走りました。途中でチェーンが外れたりもしましたが、二日間うまくリザルトをまとめることができたと思います。でもやっぱり優勝したかったです!」

G-NET2023、今年は藤原慎也、原田皓太、ZERO、すでに3名のウィナーが誕生していて、そのうち2名は初優勝という波乱の前半戦となっている。次戦は6月25日、北海道大会日高ロックス!

2日間の総合順位は優勝、ZERO。2位、原田皓太。3位、鈴木健二。4位、大津崇博。5位、ロッシ高橋。6位、木村吏。

DAY1 6位の大津はDAY2で4位。総合4位を獲得。黒ゼッケンですらない22歳の若手が、なんと3戦を終えてランキング2位につけている。

V6チャンピオン、ロッシ高橋がDAY1 5位、DAY2 7位で総合5位。トライアル出身ながら、スピードも持ち合わせている。

序盤「オイルショック」でクラッチのマスターシリンダーを破損してしまったが、その場で応急修理を終え、最低限のタイムロスでレースに復帰した木村吏。

DAY1で足の指を骨折した西川だったが、DAY2も9位に入り、総合9位。今年こそ黒ゼッケン入りを目指す西川にとって、逃すことができない大事なポイントだ。

G-NETクラス唯一のレディースライダー、木下夏芽。DAY1 29位、DAY2 25位で総合26位。後少しでポイントゲットというところまで成長している。

「あくいの一本」に押し寄せるも、簡単にクリアできず、渋滞するゲロゲロクラスライダーたち。

ZEROと、その走りを支えたRG3サスペンションの福森氏。優勝の喜びを分かち合う。

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この記事を書いた人

Off1.jp(ANIMALHOUSE)所属。2016年からG-NETの取材を続けるカメラマン兼ライターです。台湾、韓国、ルーマニアクスら海外レースへも取材に出かけ、日本のハードエンデューロシーンにかける情熱は誰にも負けません!

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