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【カズ中西のもりまち安全運転研究所】10 楽しく走れるパッキング

キャンプ場での快適性を重視するか、キャンプ場までのルートで走りも楽しみたいのか、両方を叶えられれば理想的かも。その二律背反は、キャンプ道具のパッキングや走り方を変えることによって可能となるかもしれません。今回は、僕が20代から現在に至るまで実践してきたキャンプツーリングのエピソードを紹介しつつ、楽しく走るためのパッキングについて考えていこうと思います。

切り捨ての美学と道具のアップグレード

僕の基本的な考え方として、キャンプツーリングは非日常の遊びだからこそ、利便性を削ぐという原則があります。このキャンプをアウトドアのレジャーとしてとらえるなら、色んな道具や食料を用意して、マイカーで行きます。クルマの積載性はバイクの比じゃあないから。現地で使うか否か、判断がつかないものまで積んでいくことでしょう。しかし、バイクで行くキャンプツーリングとなれば、道中の走行性能、運動性能をスポイルするような荷物のパッキングでは、道中の「ツーリング」が楽しめません。カズ兄流では、バイクに着けていくバッグ類に合わせて、出来るだけ荷物を少なくすることに知恵を絞ります。とはいえ、極限まで道具を削いでいくようなストイックさではなく、不便さも楽しむつもりで荷物を減量していきます。30年ぐらい前は、バイクの積載に特化した道具がまだまだ少なく、どうしても大荷物になっていましたが、最近は例えばテントひとつとってみても、部材の進化や組み立てのアイデアによって、かなりコンパクト化されています。その新しいアイテムに切り替えることで、キャンプツーリングのための荷物は大幅に減らすことができるでしょう。

20代は仲間内で林道ツーリング&キャンプが流行っていました。しかも、キチンと整備管理されたキャンプ場ではなく、山奥にある「キャンプしてもいいよ」という場所を見つけてのキャンプ。いわゆる藪漕ぎアタックの先に目的地があるなんてことがしばしば。となれば、ふもとの町まで簡単に行き来することができず、しかもキャンプツーリング用に特化した道具も少なかったため、大荷物をバンジーコードで括り付けていく積載方法。したがって、走行性能や運動性能がスポイルされた分を、ライディングテクニックで補うしかなかったという、修行のような時代でした。オンロードで行けるキャンプ場でも、荷物の量は大して変わらず。とにかく不便でしたが、それがまた楽しい思い出になっています。

僕のキャンプツーリングに劇的な進歩をもたらしたのが、GPZ1100時代のパニアケースです。流石にこのバイクで藪漕ぎアタックはやりませんが、ハードケースによって荷崩れの心配がなくなったため、運動性能をスポイルすることなくワインディングの走りを楽しめました。パニアケースはタンデム時もキャンプ道具の積載能力を落とさないため、随分と重宝しました。

ZZR1100に乗っていた頃は、ホームセンターで格安購入できるBOXをパニアケース代わりに使うことが流行っており、僕もあえてパニアケースを着けず、BOX使いに知恵を絞りました。固定するツールもバンジーコード→タイダウンベルト→ターンバックルと変化し、固定が上手くいくか否かに一喜一憂しました。ちなみに中身のキャンプ道具は、KLX時代と同じものがすっぽりと収まっていました。

30代の主力機はXJR1300。キャンプ道具はシートバッグに入る分だけを原則として、ハードケース時代に使っていた道具類をダウンサイジング&切り捨て。特に減らしたのはランタン&バーナー用のガスボンベで、次に食器と食料。マットも無くして寝具はシュラフのみ。やがて椅子も持って行かなくなりました。それでキャンプが楽しめるのか?と言われそうですが、僕が楽しみたいのは「キャンプツーリング」なので、コレで良いのだ(笑) ただし、焚火を囲むキャンプツーリングだけは話が別。何故なら、焚火台は僕が持っていく係りだったので。体積としてはコンパクト化できていましたが、積載重量はむしろ増えた感がありました。

同じバッグでも中身が変われば・・・

月並みですが、技術は日進月歩。僕がバイクに乗り始めた40数年前から考えれば、現代のキャンプ道具は随分と進化したように思います。特に改良が進んだものと言えば、テントとシュラフ。以前はキャンプ用の少人数タイプを使っていましたが、今はバイクへの積載性を考慮したキャンプツーリング用に切り替えました。シュラフの収納時サイズもかなり小さくなっています。これにより、シートバッグは同じでも、中の収納スペースに余裕ができただけでなく、軽量化による走行性能への好影響も表れました。

バイクは違えどもバッグは同じ。VMAX1700はパニアケースも装備しています。この時はキャンプ場のロッジ泊だったので、テントが要らない分、食材や食器類を出来る限り詰め込みました。カズ兄のZ2は、要テントのキャンプ場であったため、ガスボンベや食器類を減らし、テントを収めました。実はこの時代にテントとシュラフをコンパクトタイプに更新済みだったため、持っていける荷物の分量はXJR1300時代より増えていたと思います。

今年(2024年)の春、地元でキャンプツーリング。伊豆市舩原のキャンプ場なので、食材や道具類の補充・調達は容易にできる環境でしたが、乾杯した時点で参加メンバー誰も買い出しにいけないため、食材等の準備をそれなりにしなければならず、結果的に裾野の大野路でキャンプする時と同様の積載量になってしまいました。しかし、シートバッグを大容量のDH750Cとしたことから、パッキングにかなり余裕がありました。

先月、小淵沢の八一九塚へキャンプツーリング。シートバッグは春キャンプツーリングの時と同じくDH750Cを装着。テントをコンパクト収納のマエヒロドームDUOに切り替えたことにより、バッグ内スペースに余裕が出来ました。結果、テーブルやランタンを増やしたにもかかわらず楽々収納。途中で購入したお酒以外、全てシートバッグにパッキングすることができました。

◆ヘンリービギンズ DH-750キャンプシートバッグ システム

品番:19000

https://www.daytona.co.jp/products/detail/19000

専用バッグに収めた時のサイズがコンパクトで、展開・設営すれば2人用ぐらいの室内となるマエヒロドームDUO。前室も広々でXJR1300も入れられるサイズ感は、雨天時に役立つはず。また、設営のしやすい設計や機構を採用しているため、初心者から使いこなせそう。個人的には手足を伸ばして就寝できたことに感動です。

◆MAEHIRO DOME DUO
品番:42165
https://www.daytona.co.jp/products/detail/42165/
(※モデルチェンジのため販売終了)

キャンプツーリング仕様で楽しく走るために

キャンプツーリングの場合、積載する荷物によって走行性能や運動性能に変化が表れます。僕はキャンプも道中の走りも楽しみたいので、長年に渡り積載方法を工夫してきました。実践して分かってきたことをいくつか挙げると、
(1)重いものは出来るだけ下にする
(2)全高が高くなりすぎないようにする
(3)ワインディングで切り返しが連続してもズレにくい固定方法
(4)一瞬反応が遅れる故の操縦方法、この4つになります。

(1)は荷物を積んだことによって重心が高くなることを出来るだけ抑える考え方で、シートバッグ内で言えば、テントやテーブル類は下、シュラフや食器等は上になるよう収めます。(2)は重心が高くなることでバランスを保ちにくくなることを防ぐ考え方で、出来るだけ全高を抑えれば右に左にとカーブが連続する区間で切り返しがしやすくなります。(3)はストレッチコードやネットで荷物を固定する場合に気を付けることで、車体の左右振りが連続すると、しっかり括り付けていたつもりでも徐々にズレ動きが増えていきます。実はコレ、本人は気づきにくいもので、もし荷物が左右どちらかにズレ下がっている状態を見かけたら一声かけてあげると良いと思います。(4)はキャンプツーリングを安全に楽しくするためのキモ。リアシートやキャリアに荷物を満載の場合、加速や減速による車体の動きに荷物が一瞬遅れて動くような体感があると思います。ワインディングロードでの連続S字区間では、切り返すときに車体後方が一瞬遅れて連動してくるような感覚です。例えばブラインドカーブを抜けかけた前方に回避運転をしなければならないシーンがあったとしましょう。荷物を積んでいない状態では減速&車体の向きを変える運転を難なくこなせると思いますが、キャンプ道具など荷物満載の時は思っていたより車体が動かない、何なら反応が遅れて危険な場所を回避できないことになります。タンデム時に感じやすい挙動でもありますね。速度が低いうちならまだ何とか補正運転できますが、スピードレンジが高まるにつれ「荷物が遅れてついてくる」ことを想定した先読み運転が必要になります。また、一人乗りの時より、全体の重量増で制動距離は長くなりますから、それも見越したアクセルワークやブレーキングが重要。末永くキャンプツーリングを楽しむために、スムーズかつ丁寧な運転を心がけていただきたいと思います。

ワンタッチで確実に固定でき、積載性もすこぶる向上するパニアケース仕様ですが、この仕様であるからこそ注意したいポイントがあります。パニアケースは走行風の増加=速度上昇による空気抵抗の増加によって、空荷状態でもパニアラックに大きな負荷がかかり続けます。最悪の場合はラックやブラケットが折れます。さらに荷物満載の場合は、走行振動によるてこの原理も加わって折れやすくなります。なので、パニアケースで指定されている収納可能重量や速度上限を守ると良いでしょう。ワインディングロードでは、ケースがセンターラインを割って対向車線にはみ出さないよう注意することも重要です。

高速道路や自動車専用道路など、比較的に速度レンジが高いルートを通る際は、事前にいったん停まって、積み荷の括り付け具合を確認することも大切です。連続走行の時間が長くなるにつれ、荷物を固定しているコードやベルト類が重さ(慣性が働き続けるので)によって緩んでくることもあるからです。括り付ける力は、前後よりも左右方向をしっかり。ブレーキングで荷物が前にズレ動いてきても背中で押し返すことで安定度を保てますが、左右方向は括り付けなおさない限り対処できないです。道中で走ることが楽しくなってくると忘れがちなので、いったん停まって確認することを意識すると良いでしょう。

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