2024年11月3日
大阪府大阪市中央公会堂・中之島通り
動員数:7,000人
2024年全日本選手権は、今年もシティ・トライアル・ジャパン大会が最終戦となった。第7戦SUGO大会が終わった時点でランキング10位までに入った選手に参加の資格がある。ランキング11位以降の選手は、第7戦時点でランキングが決定する。トップ10、そしてチャンピオン争いは、この大会が最後の勝負となる。
昨年は突然の雨で、セクション部材とした無垢の丸太がツルツルに滑り、その対処に難儀をした。今年も土曜日は台風の余波で大雨になり、昨年の二の舞いが心配されたが、しかし当日は朝から晴れ渡って、多少のグリップの悪さは残ったものの、コンディションはなかなか良好となった。今大会は、有料の観客席が設けられ、熱心なファンにはありがたい観戦環境となった。無料の立ち見席は健在だ。
セミ・ファイナル
試合のプロローグはセミ・ファイナルから。設営された4セクションを往復して全8セクションをトライしてファイナルへの進出権を争う。このスタート順は、第7戦終了時点のランキングによっている。
第7戦でシティ・トライアル・ジャパン大会への出場権を得た黒山陣、久岡孝二、そして藤波貴久の3人が最初にトライする。黒山は過去2回、少年ライダーのデモンストレーションとしてこの大会に彩りを添えていたが、今回はきっちり選手として登場となった。ファイナル進出はならなかったが、果敢なトライに観客から大きな声援が飛んでいた。
藤波はさすがのトライ。しかしその実、足のつけない戦況になることを予想して、緊張に包まれつつのトライだった。
セミファイナルは往路の4セクション、復路の4セクションで争われたが、前半のトップは藤波の1点、これを2点で小川友幸、氏川政哉、小川毅士が追う展開。しかし復路の4セクションで小川友幸と氏川が5点を喫し、小川毅士はふたつの5点で順位を落とした。代わって黒山健一が4セクションをオールクリーンして順位を上げてきた。
セミ・ファイナルの8セクションを終えて、トップ6が決まった。ファイナル進出がならなかったのは久岡孝二、黒山陣、そして華麗なライディングを披露しながら、4つの5点でスコアをまとめられなかった柴田暁。柴田はこのセミ・ファイナル敗退でランキングも6位と逆転を許した。なお、本来この大会に出場しているはずの野﨑史高は、ひざの負傷で療養中につき欠場。会場ではライディング解説役として活躍した。
レディースレース
お昼休みには、山森あゆ菜、中川瑠菜、米澤ジェシカ、小玉絵里加の4人による、レディースライダーのデモンストレーション・レースが行われた。本来なら、土曜日に行われるはずだったが、悪天候の影響でこの日におこなうことになったもの。第1セクションの一部を使ってのトライは、いつもとは異なる難度の高さだったが、4人の女性陣は果敢にこれに挑戦し、熱心な観衆をわかせていた。
ファイナル
ファイナルは第1と第2、その逆走の第7、第8の4セクションで競われた。セクションはセミ・ファイナルから変更がなし。すでにクリーンの出ているセクションだが、足が出せない勝負にもなった。そしてまた、少しのミスで5点にもなれる設定ゆえ、まったく油断ができないファイナルの戦いとなった。
藤波が2点、小川友幸と氏川政哉が同点の7点、セミ・ファイナル後半をオールクリーンした黒山健一が8点でこれに続く。藤波に続いて、チャンピオン争いの3人がきれいに2位から4位までに並んでのファイナル開始だ。ファイナルはセミ・ファイナルの順位にしたがってトライ順が決められている。
必勝を目指す藤波、V14目前の小川友幸、そしてタイトル奪還を目指す黒山健一の集中力は見事だった。両者とも、是が非でも足をつかない気迫のトライが続く。たいして武田呼人、小川毅士、氏川にはミスが出た。武田は第1、第2を連続5点、氏川は第7で足が出て、第8ではタイムオーバーで5点となり、かろうじて可能性の残っていたタイトル争いに自ら終止符を打ってしまった。小川毅士に5点はなかったが、1点、3点と減点を重ねた。小川毅士は第8で唯一高い丸太から高い丸太に一気に飛んで会場をわかせたが、順位は5位となった。しかし小川は、これでランキング4位を獲得している。
勝負の焦点は、藤波とホンダの電動RTLの全日本3連覇なるか、小川友幸と黒山健一、タイトルを得るのか。先行してトライを終えた黒山は、ファイナルの4セクションをオールクリーンした。点差は1点。セミ・ファイナル終了時点でクリーン数も同一なので、小川が1回でも足をつけば、2位黒山、3位小川となる。ランキングポイントは小川が黒山に3点リード。黒山が2位、小川が3位となれば、2024年全日本チャンピオンが黒山に渡ることを意味していた。
1回も足をつけない尋常ではない緊張感の中、小川がトライする。確実、正確が身上の小川だが、さすがに乱れが出た。しかしその乱れを、足をつくことなく修正して、ファイナル4セクションをオールクリーン。小川友幸、12連覇、14回目の全日本タイトルを獲得だ。
最後にトライした藤波は、小川のタイトル獲得に喧騒に動じることなく、自らのトライに集中。藤波のトライも完璧ではなかったが、ライディングの乱れを足をつくことなく修正して、ついに出場3戦の全日本を全勝としてその仕事を終えた。
ホンダの電動マシンのデビューを最高のかたちで飾った藤波、1点を争うチャンピオン争いを制した小川友幸。大ベテランの集中力が、最後の最後まで客席を引きつけた最終戦となった。
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