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JEC全日本エンデューロ選手権 第3戦中日本2DAYSエンデューロ「1秒を競う白熱のバトル」

JEC全日本エンデューロ選手権

第3戦 中日本2DAYSエンデューロ大会

日程:2022年6月18日(土)、19日(日)

場所:富山県コスモスポーツランド

 

全日本エンデューロ選手権の第3戦が富山県コスモスポーツランドにて開催された。今シーズンのJEC最高峰IAクラスでは、昨年の最終戦SUGOで突如参入してきた馬場亮太が開幕戦から連勝中。今大会ではそれに対抗すべく釘村忠がニュータイヤを導入してきており、これまで以上に2人のバトルに注目が集まった。

開幕戦広島、第2戦SUGO2DAYSに続く第3戦はラウンド4、5にあたり、全8ラウンドで行われる今シーズンのちょうど折り返しにあたる。ここまで3ラウンドを落としている釘村にとって、この2DAYSで馬場に負けるとチャンピオン獲得が危うくなる、分岐点とも言える大会だ。

 

そのため、釘村は自らがテストライダーを務めるiRCのニュータイヤGX20をここでデビューさせた。全日本エンデューロ選手権ではFIM(国際モーターサイクリズム連盟)が定めるルールに則って使用できるタイヤに制限が設けられている。iRCではこのFIMルールに対応したタイヤとしてBR99というエンデューロタイヤが古くからラインナップされており、長年多くのライダーに愛用されていたが、他社製の新しいタイヤに比べると決して有利とは言えない状況だった。

 

iRCもそこは自覚しており、釘村と契約して新しいFIMタイヤの開発を続けてきた。それが今大会でデビューしたGX20だ。釘村にはこのタイヤとともに、チャンピオンシップの巻き返しを図る狙いがあった。

 

DAY1 ニュータイヤでも届かない馬場の強さ

 

雨天やマディコンディションが続いていた今年の全日本エンデューロ選手権だったが、今大会は2日間とも快晴に恵まれ、路面コンディションもドライ。逆に砂埃によって奪われる視界や暑さとの戦いを強いられた。

 

今大会のコースは2日間とも共通で、ルート→テスト→ルートで1周。テストは2.2kmあり、モトクロスコースとウッズを繋いだレイアウト。後半のルートのみIA、IBクラス限定の難所が設けられていた。周回数は全部で10周、最初の1周はテストのタイム計測が行われないため、9回のテストタイムで順位を競う形だ。

 

IAクラスの2周目、トップタイムを出したのは馬場でタイムは6分3秒01。対する釘村がわずか0.1秒差で続く。そしてこれまでならこの2台の独壇場だったはずのトップ争いに、保坂修一が挑んできた。釘村とのタイム差は0.36秒。モトクロスをほぼ経験しておらず、エンデューロ1本で育ってきた若手が、ついにここまできた。

 

3周目、馬場がさらにタイムを縮めて5分52秒57を出すと釘村もそこから約1秒落ちで食らいつき、保坂もほとんど同じタイム差でついていく。しかし保坂は4周目のテストで右足小指を強打し、レースからリタイヤすることを決意(のちに検査で骨折と判明)。

 

レースはそのまま馬場がトップをキープ。テスト中に左肩を木にぶつけるトラブルがあったが、大きくタイムを落とさずリードを広げていった。最終ラップのみ、馬場は翌日のためにラインを変更してタイムアップを図ったが、それが裏目に出てしまい、この周は3番手のタイムで終わった。なお、ここで初日最後のトップタイムを出したのは釘村ではなく、ペースを上げてきた榎田諒介だった。

 

結果は、IAクラスは馬場、釘村、飯塚翼というトップ3。榎田は4位に入った。

 

IBクラスはここまで3ラウンド全勝の向坊拓巳が3周目、4周目にトップタイムを出したが、8周目にハイサイドを喫して派手にクラッシュし、順位を大きく落としてしまった。また、釘村に師事していることから、ぶっつけ本番でGX20を使用した青木琥珀も2番時計を連発するなど上位に食い込んできたが、後半でスタミナ切れを起こしてしまう。結果、優勝を攫ったのは世利和輝だった。

 

NAクラスは高橋吟が全ラップでトップタイムを更新し続けるパフォーマンスを見せて完勝、NBクラスはJEC初出場の土屋吉輝、WクラスはミニサイズのKX100で保坂明日那が優勝。

 

DAY2 まさに実力伯仲、馬場VS釘村!

 

通常、JECでは日曜日のみのレースの場合は土曜日に会場に入りコースを歩いて下見するライダーが多い。しかし、平日は仕事を抱えているライダーがほとんどのため、今回のような土日開催の2DAYSとなると、金曜日に入って下見ができるライダーは多くない。今大会も例に漏れず、DAY1のレース終了後、多くのライダーがレース後で疲労している足でコースを歩き、より速く走るための新しいラインを探した。特にウッズのライン取りが難しかったことから、ウッズを中心に見るライダーが多かった。

 

DAY1をリタイヤし骨折の診断を受けた保坂もこの下見に参加しており、日曜日の朝にはスタートラインに立った。

 

土曜日よりもさらに気温が上がり、30度を超える夏日となった日曜日。選手会会長である大川誠と運営サイドはDAY1終了後に検討を重ね、選手の意見も取り入れた上で、ルートの一部コースカットと周回数の全クラス1周減を決定した。理由は主に熱中症対策だ。1周にかかる時間が短くなったことでパドックで涼む余裕を確保でき、レース時間も短くなった。テストコースには変更がないため、DAY2は1周目からタイム計測を行い、結果として計測ラップ数はDAY1と同じとなった。

 

IAクラス、馬場と釘村のバトルはより僅差で展開された。1周目に釘村がDAY1のベストタイムを10秒以上縮める5分40秒13で1番時計を叩き出すと、2周目には馬場が5分40秒51を記録。交互に1番時計を出しあう鍔迫り合いがラストラップまで続いた。

 

なんと7周を走って合計タイム差は0.75秒。まさに実力伯仲と言える勝負だ。勝負が決まるラストラップ、先にテストに入ったのは釘村。ここで気合の5分38秒14というタイムを出して2日間のベストタイムを2秒近く更新したが、直後に続いた馬場がまさかの5分37秒92をマーク! 結果は0.97秒差で馬場の優勝となった。

 

続いたのはDAY1後半からペースを上げてきた榎田。そして飯塚、酢崎友哉。骨折しながらも復帰した保坂は6位に入った。

 

IBクラスでは優勝候補筆頭の向坊がまさかの1周目にチェーンが切れるトラブルでリタイヤ。DAY1に引き続き世利が優勝を果たした。125ccのマシンで戦う青木が健闘し3位表彰台を捉えていたが、最終周に熱中症で意識が朦朧としたままテストを走り、5位に。

 

NAクラスはDAY1に続き高橋が優勝、NBクラスは塚越智也、Wクラスは太田晴美が優勝を飾った。

 

馬場亮太

「コスモスポーツランドは、僕がモトクロスの現役時代に中部のモトクロス選手権でよく走っていたコースで、テストのモトクロスコース部分はほとんどそのままのレイアウトだったので、当時の経験を活かすことができました。大きなミスはなかったのですが、ウッズの中で湿ってる黒土の中に石が埋まってるところのライン取りが難しく、フロントタイヤが石に弾かれてハンドルがとられてしまうと、クラッシュしそうで怖かったです。Day2は1周目から昨日のベストタイムを更新したのですが、釘村さんがもっと速いタイムを出していて、めちゃくちゃ気合入れて2周目以降に挑みました。テスト内の湿ったガレの登りが本当に難しくて、昨日もそこがうまく走れなかったので、レースが終わった後にもう一回下見したんです。それでラインは見つけていたんですけど、やはりうまく走れなくて。最後の9周目に全てがカチッとハマって、べストラップを出すことができました。今日の優勝は本当に嬉しいです」

 

釘村忠

「DAY1は、序盤けっこう調子が良かったので、5周目で少し攻めてみたらミスして転んでしまって、そこで大きくタイムを離されて、リズムを崩してしまいました。これまでのタイヤですとレース後半になってブロックが削れてブレーキングで滑りそうな感覚があったのですが、新タイヤのGX20はすごく耐久性もあって、レース後半まで高いグリップ性能を維持してくれました。DAY1のレース後に下見して新しいラインを見つけたり、走り方もギアの一番美味しいところをうまく繋いで走るように改善してみました。そして1周目から気合入れてタイムを出していったんですけど、亮太もどんどん攻めてきて、やっと本気を引っ張り出せたんじゃないかな、って思っています。走りを変えたのもラスト1周にうまくハマってくれてベストを更新できたのですが、亮太の方が速かったですね。本当に、こんなに頑張り甲斐のあるシーズンは久しぶりで、めちゃくちゃ楽しいです」

 

榎田諒介

「昨日の前半はラインがうまく掴めなくて苦戦していたんですけど、最終周でベストラインを見つけて1番時計を出せたので、今日はそのラインを使って、安定していいタイムを出すことができました。昨日の前半でついてしまった差をなんとか詰められて、総合でも3位に入れたのが良かったです。前の2人が速すぎて、今日は結局1番時計が出せなかったので、次の九州までにまた練習して少しでも追いつけるように頑張りたいと思います」

IBクラスで2DAYS優勝を飾った世利和輝。トライアル出身のため、元々スタンディングは得意としていたが、今シーズンはスタンディングでのスピードトレーニングを取り入れたことで、体力の消耗が抑えられたとのこと。

NAクラスで2DAYS優勝の高橋吟。IAトップ10並のテストタイムを出しており、もはや別格。DAY2の最終周で限界まで攻めたものの、IAトップには約30秒の差があり、信じられないという表情を見せた。

 

JNCCのCOMP-Aクラスに出場する土屋吉輝はJEC初参戦。もちろんオンタイムルールも初めてだったが、仲間に教わりながら参戦し、DAY1を優勝。DAY2は3位だったが、総合優勝も勝ち取った。

NBクラスDAY2を制したのは塚越智也。開幕戦広島以来、今シーズン2勝目。DAY1のレース後の下見でウッズのラインを見つけ、タイムを縮めることに成功したという。

WクラスDAY1優勝の保坂明日那。今シーズンはフルサイズマシンに慣れるため、125SXで参戦して不振が続いていたが、マシンのメンテ中のため昨年のチャンピオンマシンKX100を持ち込み、見事優勝。

トレーニング中に右手を骨折していたという太田晴美が、WクラスDAY2を優勝。DAY1は熱中症で調子が出なかったため、DAY2は毎周水を浴びてスタートしていたという。総合優勝も太田が獲得した。

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この記事を書いた人

Off1.jp(ANIMALHOUSE)所属。2016年からG-NETの取材を続けるカメラマン兼ライターです。台湾、韓国、ルーマニアクスら海外レースへも取材に出かけ、日本のハードエンデューロシーンにかける情熱は誰にも負けません!

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