2024全日本スーパーモト選手権第7戦レポート
2024年11月10日(日)
美浜サーキット(愛知県)
すべてのクラスがこの最終戦でチャンピオン決定!
昨年よりも1戦増えて全7戦のスケジュールとなった今季の全日本スーパーモト選手権シリーズは、11月10日(日)に愛知県の美浜サーキットでシリーズ最終戦を迎えた。
知多半島南部に位置する美浜サーキットは、全長約1200mのオンロードコース。今大会では、最終セクションにかなり長めの第1ダートおよび短距離のターマックを挟んだ短めの第2ダートをプラスした、特設コースが使用された。ダートセクションは、今大会に向けてレイアウトを変更。路面はハードかつスリッピーで、ミスを誘発しやすいコンディションだった。
天候は曇りで、路面はドライコンディション。朝はそれなりに冷え込んだが、日中の最高気温は19℃まで上昇した。
全日本格式のクラスは、いずれもこの最終戦までチャンピオンが決まっておらず、3クラスともトップと2番手のポイント差は20点以内という接戦状態で、最後の2レースに臨むことになった。
小原堅斗が2レース優勝でシリーズタイトル奪還!
全日本最高峰となるS1プロクラスは、参加した13名全員が4スト450ccマシンを駆り、予選は10分間のタイムアタック方式、決勝は10周の2レース制で競われた。前戦終了時点で、小原堅斗(#2)が246点で再びランキングトップに返り咲き、これを238点で日浦大治朗(#1)が追う状態。ポイントスケールは優勝で25点、2位で20点、3位で16点、4位で13点、5位で11点……となっており、2レースを制覇すれば、小原の順位に関係なく日浦にもタイトル獲得の可能性が残されていた。タイムアタック予選では、その日浦が1分18秒677のトップタイムをマーク。しかし小原も1分18秒677を記録し、両者譲らぬ展開となった。予選3位には1分19秒321でランキング3番手の川島颯太(#3)、同4位には1分20秒550で川島と10点差のランキング4番手につける佐藤瑞城(#20)が入り、ここまでがレース1のフロントロースタート。またレース1のスタート2列目には、金子和之(#5)と川上祥史(#15)と佐々木啓之(#13)が並んだ。
決勝レース1では、日浦がホールショット。これに小原と川島が続いた。1周目のダートセクションでは、小原と川島が先行。これを僅差で日浦が追う三つ巴の状態で2周目に突入し、さらに佐藤と川上と金子と小鹿翼(#25)が続いた。2周目、ターマックで日浦が一気にトップ浮上。抜かれた小原は日浦の背後に迫ったが、川島はエンストによりこの2台から2秒ほど遅れ、佐藤と川上と金子が続いた。3周目には、川上がミスにより3番手争いの集団から脱落。日浦と小原のトップ争いは依然として白熱し、以降はそれぞれ約3秒間隔で3番手に川島、4番手に佐藤、5番手に金子、6番手に小鹿となった。4周目には、トップ2台と川島のギャップが約5秒に拡大。4番手の佐藤には金子が肉迫し、ここからレース終盤まで佐藤と金子は接近戦を続けた。
日浦と小原のバトルは、レースが後半に入っても落ち着きを見せることはなく、6周目には再び小原が先行したが、ここはすぐに日浦が再逆転。バトルを続けながらも両者のラップタイムは落ちず、3番手の川島は完全に遅れた。レース終盤、トップを死守する日浦がじわじわとリードを拡大しはじめ、ラストラップの10周目に入る段階で日浦と小原は約2秒のギャップ。これで勝負はあったかに思われた。ところが、ダートセクションで差を詰めた小原が、最終コーナーで日浦のインに飛び込んで逆転。これで小原が優勝、日浦が2位となった。3位は川島、4位は最後まで金子の猛攻に耐えた佐藤、5位は金子、6位は小鹿。この結果、小原は13点リードで最終のレース2に臨むことになり、日浦が優勝した場合でも4位以内ならチャンピオン確定という状況となった。
決勝レース2は、レース1のゴール順位でスターティンググリッドへ。小原が順当にホールショットを奪うかに思われたが、1コーナーのレイトブレーキングで日浦が先行した。1周目は日浦、小原、川島がトップグループを形成し、さらにほとんど遅れることなく佐藤や金子らが追撃。しかし2周目以降に、4番手の佐藤は川島から遅れはじめ、これでトップグループは3台に絞られた。3周目には、日浦と小原が接近戦を繰り広げ、約1秒差で川島が追い、佐藤と金子の4番手争いは川島から6秒ほど遅れた状態。その後、佐藤と金子はレース1同様に接近戦を続けた。レース前半が終了する5周目の段階で、日浦と小原と川島のトップグループは、それぞれ約2秒間隔に。4番手以下はここから大きく遅れた。
6周目、小原が日浦との距離を詰め、逆に川島はミスもあって小原から5秒ほど遅れ、これで日浦と小原のマッチレースに。終盤にかけて小原は日浦に迫ったが、日浦もチャンスを与えずにいた。しかし最終ラップとなった10周目の第2ダートで、小原が逆転に成功。これにより小原が優勝、日浦が2位となり、最高峰クラスでは2年ぶり2度目となる小原のシリーズタイトル獲得が決まった。川島は、レース終盤は単独走行となって3位。佐藤を追っていた金子は8周目に転倒して大きく後退し、これで逃げ切った佐藤が4位、順位を上げた小鹿が5位となった。シリーズランキングでは、チャンピオンの小原、2位の日浦に次ぎ、4位の佐藤をこの最終戦で引き離した川島が3位となった。
小原堅斗(レース1・優勝/レース2・優勝)
「この最終戦は日浦大治朗選手の地元に近いコースでの開催ということもあり、自分にとっては厳しいレースになるかもと予想していました。でも、チャンピオン争いのことを考えすぎても仕方がないし、負けたとしても来年のチャンピオンにつながるような走りをしようと考えて、大会に臨みました。レース1は、中盤まで日浦選手とバトルできていましたが、終盤にかけて自分のミスもあって離され、正直なところ焦りもありました。ただただ日浦選手の背中だけを見て追い続け、最後の最後で近づき、躊躇なく勝負を仕掛けられたというのが、良かった点だと思います。レース2は、チャンピオンになれる条件について周囲の方々からいろいろ言われましたが、そんなことを考えていたら速くなれないと思い、勝つことだけを意識して臨みました。とはいえ2位でもチャンピオンになれることは理解していましたが、それで良しとせず、最後にまた勝負して勝てたことが本当にうれしいです。今年からカワサキにマシンをスイッチし、開幕戦から苦しい展開が続いていましたが、チームやスポンサーや応援してくださる方々に支えられ、チャンピオンになれました。心の底から感謝しています!」
日浦大治朗(レース1・2位/レース2・2位)
「今年は、第2戦レース2の転倒リタイアによるノーポイントが響いたとはいえ、名阪スポーツランドでの2戦とこの最終戦は、実力で負けたと思っています。自分としては、今シーズンはロードレースのほうも好調で、確実に速くなっているという実感はあったのですが、小原堅斗選手がそれ以上に速くなっているので、自分もそれに負けないようにさらなる進化をしないと、勝てない状況になってきました。自分が遅いところは明確なので、来年に向けて鍛え直していきたいです。具体的には、ターマックをこれ以上のスピードでというのはリスクを考えると厳しいし、今日のレースでも試してみましたが、それで離せるのはせいぜい数秒。これを踏まえると、ミスが多いダートの走りを改善するほうが、勝利にはつながりやすいと思っています。チームとして長谷川修大選手と協力しながら、シーズンオフはダートのトレーニングに時間を割きたいと思います。1年間の応援、ありがとうございました」
佐藤祐季が最終レースで逆転して、S2とダブルタイトル獲得!
S1オープンクラスは、10分間のタイムアタック予選と、8周の決勝2レースで競われた。今大会の予選出走台数は20台。沖勇也(#44)が1分19秒685のトップタイムをマークし、これを1分20秒423でS2クラスとダブルエントリーする鈴木優那(#50)、1分20秒998で伊藤諒(#49)、1分21秒006でこちらもS2とダブルエントリーする佐藤祐季(#46)が続き、決勝レース1のフロントロースタートとなった。予選5位は、ポイントリーダーとして今大会を迎えた田淵智之(#17)。ただしラップタイムは1分22秒043で、予選4位の佐藤からは約1秒遅れとなった。なおポイントランキングでは田淵が142点、佐藤が128点、沖が124点と、このクラスも接戦となっている。
迎えた決勝レース1は沖のホールショットで幕を開け、これに鈴木や佐藤や伊藤や田淵が続くと、沖がダートでミスして7番手まで後退し、鈴木がトップ、佐藤が2番手、伊藤が3番手で1周目をクリアした。4番手には田淵、5番手には岡田駿介(#30)が続いたが、2周目には3番手の伊藤と4番手の田淵は早くも約5秒のギャップに。また、沖はこの周にダートで転倒してポイント獲得圏外に沈むと、その後にターマックでも激しくクラッシュした。トップの鈴木はじわじわとアドバンテージを拡大し、レース前半で約3秒のリード。2番手の佐藤には伊藤が僅差で迫った。また、3周目の段階で伊藤から7秒ほど遅れた4番手の田淵には、岡田が肉迫。4周目には逆転に成功した。
レース後半、鈴木はリードを守りながらトップを快走。3番手の伊藤は前を走る佐藤を僅差でマークし続けたが、7周目から少し遅れた。4番手に浮上した岡田は、田淵を引き離して単独走行に。田淵も単独となったが、レース終盤には水野彰久(#8)がやや距離を詰めた。そしてレースは鈴木が勝利を収め、佐藤が2位、伊藤が3位、岡田が4位、田淵が5位、水野が6位でゴール。これによりポイントランキングでは田淵が153点、佐藤が148点、ノーポイントだった沖が124点、勝谷仁(#40)が118点、伊藤が116点で、次の最終レースを迎えることになった。
決勝レース1のゴール順でグリッドに並んでスタートしたレース2は、2番グリッドから好スタートを決めた佐藤がホールショット。これに鈴木、伊藤、岡田、水野、田淵が続いてオープニングラップをクリアした。2周目、佐藤と鈴木は後続を4秒ほど離して先頭争い。さらに伊藤と岡田も、5番手以下を6秒ほど離して接近戦を繰り広げた。3周目、ダートで鈴木が佐藤に仕掛けたが、ここで佐藤に追突した鈴木がエンスト。佐藤が3秒ほどのリードを奪った。伊藤と岡田は、依然として接戦。5番手争いを繰り広げていた水野と田淵が第2ダートで接触転倒して大きく遅れ、これで高部充陽(#7)が岡田から約10秒差の5番手となった。
一度はギャップが拡大したトップ争いは、2番手の鈴木が距離を詰め、5周目から再び接近戦に。また、この2台から大きく遅れて伊藤と岡田が3番手争いを続け、5番手の高部には、19番手スタートから追い上げてきた沖が迫った。7周目に沖は高部を抜いたが、トップ争いと3番手争いは最後まで順位が変わらず。レースは8周でチェッカーとなり、佐藤が優勝、鈴木が2位、伊藤が3位、岡田が4位、沖が5位、高部が6位となった。田淵は13位に終わり、これにより佐藤が逆転でシリーズタイトルを獲得。田淵がランキング2位、沖が同3位となった。
鈴木優那が2レース制覇。佐藤祐季がチャンピオン!
前戦終了時点で佐藤祐季(#23)が234点を獲得してランキングトップに立ち、これをわずか4点差の230点で藤田友貴(#6)が追う、し烈なチャンピオン争いが続いたS2クラス。今大会の出走台数は5台で、こちらも予選は10分間のタイムアタック方式、決勝は8周の2レース制となった。タイムアタック予選では、約1年半ぶりにケガから復帰して第4戦から参戦を続ける女性ライダーの鈴木優那(#26)が1分21秒654のトップタイムをマーク。これを1分22秒316で佐藤祐季、1分22秒657で藤田が追った。予選4位は佐藤省吾(#5)が入ったが、タイムは1分26秒151で、トップ3が完全に抜け出した状態。鈴木は佐藤省吾と19点差の123点でランキング4番手につけており、逆転でのランキング3位が狙える状況だった。
決勝レース1は、ポールポジションスタートの鈴木が順当にホールショット。予選2位の佐藤祐季が続いた。藤田がやや出遅れて佐藤省吾が先行したが、すぐに藤田が逆転。1周目は鈴木がトップ、約2秒差で佐藤祐季が2番手、さらに1秒差で藤田が続いた。レース前半、トップの鈴木は2~3秒のリードをキープした状態で、トップを快走。佐藤祐季と藤田は、4番手の佐藤省吾を少しずつ離しながら、僅差の2番手争いを繰り広げた。しかし4周目には、藤田が佐藤祐季から1秒ほど遅れた。
レース後半、トップの鈴木はさらに少しアドバンテージを拡大。後続とのギャップは3~4秒に拡大した。2番手の佐藤祐季は、追いすがる藤田をコンマ数秒単位で離し、ラストラップの8周目に入る段階で、両者は約1.5秒差。そしてレースは鈴木が今季5度目の勝利を挙げ、佐藤祐季が2位、藤田が3位、佐藤省吾が4位となった。この結果、佐藤祐季が8点リードのポイントリーダー、藤田がランキング2番手、鈴木は佐藤省吾まで7点差の同4番手で、今季最終戦となるレース2に臨むことになった。
レース1のゴール順でスターティンググリッドに並んだレース2は、ポールポジションスタートの鈴木がホールショット。佐藤祐季はやや出遅れ、チャンピオン争いのライバルとなる藤田が先行した。レース序盤、鈴木と藤田と佐藤祐季は、それぞれが1~2秒間隔のトップグループを形成。4番手の佐藤省吾は、周回ごとにこの集団から遅れていった。鈴木の前に出れば逆転チャンピオンとなる藤田だが、4周目には鈴木のリード拡大を許し、逆に藤田の背後には佐藤祐季が接近。4周目以降、トップの鈴木が2~3秒のリードを守り、藤田と佐藤祐季の接近戦が続いた。
残り2周となった7周目、佐藤祐季はさらに藤田との距離を詰めたが、ここは藤田が意地を見せてポジションを死守。そしてレースは、危なげなくトップを守り切った鈴木が再び勝利を収め、藤田が2位、佐藤祐季が3位、佐藤省吾が4位となった。これにより、シリーズランキングでは佐藤祐季がチャンピオンに。藤田は惜しくも4点差のランキング2位となった。また、鈴木は最後に佐藤省吾を逆転して、第4戦からの出場ながらクラス最多のシーズン6勝をマークして、ランキング3位となった。
▼正式リザルトはこちらにアップいたします。
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