ディストリビューターとは
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ディストリビューターとは、点火プラグに電流を流すエンジン周りのパーツで、エンジンの気筒数に合わせて、イグニッションコイルの高圧高電流をスパークプラグに分配するのが役割です。
英語でも「distributor」で「分配器」の意味がありますが、略して「デスビ」とも呼ばれています。
旧車に見られるパーツ
ディストリビューターは、現在販売されるバイクには付いておらず、旧車など古い年式のバイクに使われているパーツです。
最近ではダイレクトイグニッションのバイクが主流で、ディストリビューターが付いたバイクも減ってきました。
また、気筒ごとにイグニッションコイルを配するDLI(ディストリビューター・レス・イグニッション)が備わっているバイクもあり、ディストリビューターとダイレクトイグニッションの間のような存在です。
新しいバイクはダイレクトイグニッションが一般的
現在販売されるバイクのほとんどの車種では、ディストリビューターは使われておらず、各気筒の点火プラグの上に点火コイルを備えた、ダイレクトインジェクションが主流です。
ディストリビューターは電流を分配するので、コンセントに挿す電源タップのような役割を果たしています。
気筒数が増えても電流の分配ができるので、比較的安価に電流を分配できる反面、電力のロスや電極に負担を与えるなどのデメリットがありますが、そんなデメリットを補うのがダイレクトイグニッションです。
ディストリビューターの仕組みと役割
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ディストリビューターとは分配を行うパーツですが、より詳しく仕組みを解説していきます。
ディストリビューターの仕組みに加え、役割とメリット・デメリットも合わせて解説していきますので、そちらも参考にしてみてください。
ディストリビューターの仕組み
ディストリビューターは、エンジンのピストンと同期しているカムシャフトと連動して回転しており、カムシャフトの回転に従ってディストリビューター内部のローターも回転します。
ディストリビューターのローターが回転すると信号を発し、信号によって電気の分配を行う仕組みです。
ディストリビューターの役割
ディストリビューターの役割は、イグニッションコイルで生み出される高電圧の電流を、各シリンダー(気筒)のスパークプラグへ配電するパーツです。
ディストリビューターによって配電された高電圧により、シリンダー内に噴射された燃料ガスにスパークプラグが火花を放って爆発させ、ピストン運動へとつながっていきます。
ディストリビューターは、エネルギーを生み出すために必要な電流をスパークプラグに届けるため、とても重要な役割を持ったパーツです。
ディストリビューターのメリット・デメリット
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ディストリビューターのメリットとデメリットとはどのような点なのでしょうか。
メリットとデメリットを知れば、より深い仕組みや役割の理解につながりますので、こちらも合わせて参考にしてみてください。
ディストリビューターのメリット
ディストリビューターのメリットは、点火するまでの配電が比較的安価にできる点です。
イグニッションコイルの高電圧をディストリビューターが配電し、各シリンダーへと送り届けるため、イグニッションコイルも1つで事足ります。
ダイレクトイグニッションやDLI(ディストリビューター・レス・イグニッション)は、シリンダーごとにイグニッションコイルが必要になるため、ディストリビューター方式よりもコスト高です。
ディストリビューターのデメリット
ディストリビューターには、以下のようなデメリットがあります。
- 電力の損失が生じやすい
- 点火タイミングを細かく調整できない
- ディストリビューターの接点が摩耗するので定期的な点検が必要
ディストリビューターの構造上、配電する間に電力の損失が起き、損失を見越してより多めの電力を生み出す必要があるため、効率が悪く燃費にも悪影響が出ます。
点火タイミングが適切でないと、燃料の燃焼に影響が及ぶため不完全燃焼が増えるだけでなく、有害ガスの発生率が上がり燃費にも悪影響が出るため、燃費性能の向上には点火タイミングの最適化が必須です。
ディストリビューターは昔の技術で、近年求められる燃費に対して悪影響を及ぼしやすい上、ディストリビューターの接点が摩耗するため、定期的な点検と摩耗部品の交換も必要になる、という点もデメリットになります。
ディストリビューターの交換時期はいつ?
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ディストリビューターは接点部分が摩耗するため、定期的な点検や部品の交換が必要になります。
交換時期を見分けるための判断ポイントは以下の通りです。
- 走行距離で判断
- エンジンの調子が悪くなったと感じたら
- 異音がするようになったら
走行距離で判断
ディストリビューターの交換時期は、走行距離を目安に判断するのが一般的です。
走行距離が5万Kmを超えたら点検し、必要に応じて交換が必要となりますが、バイクの乗り方や保管期間などによって、5万Kmで交換が必要な場合もあれば10万Km近く走行できる場合もあります。
走行距離はあくまでも交換時期の目安で、バイクの個体差によって交換時期が前後しますが、ディストリビューターが付いているバイクは年式も古い場合がほとんどですので、より短いサイクルでの点検が必要です。
エンジンの調子が悪くなったと感じたら
エンジンの調子が悪くなったと感じる場合や、燃費が悪くなった場合もディストリビューターの点検を行い、必要に応じて交換しましょう。
また、ディストリビューターが配電する高電圧を生み出すイグニッションコイルに不具合が出ている場合も、エンジンがかかりにくい、アイドリング時にエンジン回転数が不安定などの症状が起きます。
正常な火花を飛ばせているときは、スパークプラグの焼色がこんがりきつね色になっているので、プラグの焼け具合で点火の様子が読み取れることもありますが、エンジンの調子が悪いと感じたらショップで点検してもらいましょう。
異音がするようになったら
ディストリビューターに不具合が生じた場合、「カラカラ」「ゴリゴリ」など回転に伴う異音が聞こえてくる場合があります。
異音がディストリビューター付近から聞こえてくるようなら、ディストリビューターの不具合が疑われますので、早めにバイクショップで点検をしてもらいましょう。
ディストリビューターが故障すると、走行中やアイドリング時に突然エンジンが止まったり、アクセルを開けても反応が悪くなったりするので、走行にも支障が出ます。
エンジンのシリンダー付近から「カラカラ」と異音が聞こえてくるようなら、エンジンがノッキングを起こしている疑いがあります。
ディストリビューター故障の原因
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ディストリビューターは消耗品ですが、普段の乗り方を丁寧にする、しっかりメンテナンスを行うなど、バイクの取り扱いに注意すれば寿命が長くなるケースもあります。
ほかにも、ディストリビューターを長持ちさせるためにも、以下の故障につながるようなことを避けるようにしましょう。
洗車時に水で濡らす
ディストリビューターが水で濡れると故障の原因となることがありますので、洗車の際はできるだけバイクのエンジン周りに水を掛けないよう注意が必要です。
天候の影響を受けるバイクは雨を想定して上からの水には強いですが、横や下から水を掛けると車体の奥や配線部まで水が侵入することがあり、あまり耐水性がよくありません。
そのため洗車を行う際は、できるだけバイクの上から水を掛けるようにし、下や横から水を掛けないよう注意が必要となりますが、特に高圧洗浄機を使う場合はより水の向きに注意しながら使いましょう。
風の強い雨天時の走行
風が強い日の雨は、バイクの車体下に雨水が侵入しやすくなり、ディストリビューター故障の原因につながることがあります。
洗車で水を掛けるケースにも似ていますが、バイクは下からの雨に強くないので、風によって巻き上げられた雨水がバイクの車体下に入り込みやすいです。
雨水がディストリビューターに掛かると故障しやすくなるほか、電力が漏電して点火タイミングがずれたり、適切な電力を配電できなかったりして、エンジン不調の原因にもなります。
ローターやキャップの摩耗や汚れが付着
ディストリビューターを構成する部品にローターがあり、ローターが摩耗してきたり汚れが付着してきたりすると、電気の流れが不安定となり、エンジン不調の原因になります。
また、ディストリビューターのキャップにもカスなどの汚れが溜まり、接点不良を起こして適切に電流を流せなくなり、不調や故障の原因になることも。
摩耗部品は交換し、汚れが付着している場合は汚れを落とせば接点が復活し、不調が直ることもあります。
ディストリビューターの交換費用目安
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走行距離が5万Kmを超えた場合や、エンジンが不調になったと感じたときがディストリビューターの点検・交換時期ですが、交換の費用は幾らくらいになるのでしょうか。
こちらの項では、バイクショップに依頼した場合の点検・交換費用の目安を解説していきますので、ディストリビューター付きのバイクに乗っている方は、いざという時の参考にしてみてください。
バイクショップで交換してもらう場合
ディストリビューターをバイクショップで交換してもらう場合、車種にもよりますが部品代として20,000円~45,000円程度です。
交換工賃が5,000円~8,000円前後となり、部品代と交換工賃を合わせて、25,000円~53,000円程度がディストリビューターの交換相場となります。
ディストリビューターは年式の古い車種に多く、交換の時期になると他の部品もメンテや交換が必要なケースも多々あるので、希少性の高いバイクやよほど愛着のあるバイク以外は、バイクの乗り換えを検討したほうがその後の出費を抑えられることも。
中古部品を使って交換する場合
ディストリビューターが付いているバイクは古い年式のものが多いため、すでに交換部品がない場合もあります。
その場合は中古部品で賄う形となりますが、中古のディストリビューターの相場は6,000円~20,000円前後です。
バイクショップに交換した場合の工賃は、新品と交換する場合と変わりませんので、5,000円~8,000円程度が中古のディストリビューター代に加算されます。
まとめ
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バイクのディストリビューターについて、ディストリビューターの仕組みや役割など基本的な働きや、メリット・デメリットについて解説してきました。
現在新車販売されているバイクでは別の方式が採用されている車種も多く、ディストリビューターを見かけることがなくなってきましたが、旧車など年式の古いバイクでは標準的に使用されています。
ディストリビューターの構造上、摩耗するなど定期的なメンテナンスや交換も必要となり、交換時期の目安や交換費用の目安についても解説していますので、該当するバイクにお乗りの方はぜひそちらも参考にしてみてください。
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